ほ ん だ な 。.

□エルビスの境界
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 我々は知らねばならない。

 この世界が“エルビス”と呼ばれるその由縁を。


 太古(タイコ)の昔、まだ世界が創造されたばかりの頃の話。この世界には巨大な隕石が落ちたという。

 それによって水で満たされていた世界は拓(ヒラ)け、大地が生まれ、生命が芽吹いた。

 母なる女神ルイシェルは、その様々な世界の恵みから新たな命の形を作り上げたのだ。


 故に、父なる火山より生まれし種族は燃え盛るような情熱と闘志を持ち、母なる海より生まれし種族は静かな慈愛と優美さを持つという。


 やがて生命は生命を築く。

 また新たに生命が生まれていく。


 その生命の輪廻を繰り返し、この世界は種族と自然とが共存する世界となった。


 人々はこの世界を“エルビス”と呼んだ。

 エルビスは古い言葉で“数多(アマタ)の夢”を意味する。

 美しいこの世界を、人々はエルビスの世界と呼んだのだ。数多の夢の世界だと。
 エルビスは未来永劫繁栄の絶頂を維持し続けると、夢を絶やさない世界であるようにと、人々はそう願った。 




 どうか覚えていてほしい。我らは女神ルイシェルと、このエルビスによって生かされていることを。

 そして我々が生きるこのビオッシェル王国は、今日も遠い天空の彼方へと繋がっているエルビスの境界の下で、永遠の繁栄を授かっている――。





―‥ 著:フィオナ=ラクターナ ‥―
―‥ 題:ビオッシェル王国記 ‥―


 
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