ぎんたま

□この気持ちは、君がいたから
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「…ねぇ、旦那」

「何?」

「付き合って下せェ」

「やーだよ」

さっきからそれの繰り返し

沖田はいつものように仕事をサボって市中をぶらぶらと歩いていた

そこにいつものように仕事も無くぶらぶらと歩いていた銀時を見つけたのだ

何か奢ると言えば二つ返事で付いてきた
そして今、公園でパックいっぱいに入った団子を銀時は幸せそうに食べている

公園は平日ということもあり、2人以外に誰もいないし、通行人もまばらだった


「それがダメなら抱かせて下せェ」

「それも却下」

「いいじゃないですかィ。どうせ暇ならこのままホテルにでも行きましょうぜィ


「だーめ。銀さんはそんなに安い人間じゃないですー」

端から見れば最低な会話かもしれない

でも沖田にとってはそれが唯一の銀時との繋がりであり、楽しみだった

救えねぇな

そんな呆れと自己嫌悪が自分を惨めに思わせる


「…じゃあキスして下せェ。団子の礼としては釣り合うでしょう」

ずっと夢見てたことだった

愛するあの人が一瞬でも自分のことだけを考えてくれる

いつから俺はこんなに女々しくなっちまったんだろうと思う
愛されるはずない

あの人は俺が一番嫌いな奴を愛してる

ならば奪ってしまえばいいとか、そう簡単にはいかない

何よりあの人に嫌われるのが怖い

『当たって砕けろ』なんて考え方は存在しなかった

きっと砕けてしまったら気でも狂って旦那を殺しちまうかもしれない

その後その手で自分自身も殺めるだろう

そんな事ができたらどんなに楽だろう

死んでまで一緒にいられるなんてどんなに幸せだろう

あぁ、旦那、愛してまさァ

許されるのならずっと一緒にいてください

必ず幸せにします

あいつとは違って絶対に悲しませたりなんかしません

だからアンタも俺を愛してくたせェ


声にならない悲壮の叫びは浮かんでは消える

わかっているのに、納得ができない自分に苛立つ

「…んー、いいよ」

そう言った瞬間、銀時の少し荒れた唇が沖田の頬に触れた


時間が、止まった


唖然としてる沖田をよそに、銀時は唇を放し立ち上がる

「また奢ってね」

そう言うとまだ団子が入ったパックを手に取り、もと来た道を行った

「本当、救えねぇな」

きっとアンタと出会わなかったらこんな感情、知らないままだった

だけどアンタと出会わなかったらきっとこの世界はつまらなかっただろう

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