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□仮の装い
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ハロウィン企画









「おっはよージョーカーくん!」

「おはようございます」

ハイテンションなクイーンと落ち着いているジョーカーが挨拶を交わす。

いつもどおりの朝だった。

いや、いつもどおりの朝になる予定だった。

ジョーカーがクイーンの恰好を見るまでは―――。

「……なんですか、その恰好」

「ああ、これ!気づいてくれたのかい?」

嬉しそうに話すクイーン。

ジョーカーは脳内で「気づかないほうがおかしい」と毒づいた。

ジョーカーの見たクイーンの恰好。

クイーンは、長い黒ローブを着て仮面とマスクの間のようなものを顔につけ、その上頭にねじみたいなものがくっついているものを帽子のようにかぶっていた。

「これ、ア○ゾンで安かったんだよ!これは5000円ちょっと、こっちは3000円弱で、これは―――」

「なんですか、その恰好」

ワントーン低い声で重ねて問うジョーカー。

クイーンは一瞬声をとぎらせたが、ジョーカーの絶対零度の視線をみて渋々答えた。

「ハロウィンの仮装だよ」

「ハロウィン?」

「知らないのかい?10月31日の行事で―――」

「そんなことは知ってます」

邪険に手をひらひらさせるジョーカー。

「ぼくが聞きたいのは、なんの恰好をしているのか、という意味です」

「だから、ハロウィンの仮装って言ってるじゃないか」

「だから!その仮装の中で何の恰好をしたいんですか、あなたは?ただの仮装ならまだ我慢できます。でも、これは……」

頭のてっぺんからつま先まで遠慮なく眺める。

邪眼でにらまれているクイーンは、居心地悪そうにもぞもぞする。

「なんの仮装ですか?」

「えー……とねえ、」

とっさにはいえないクイーン。

しばらく、RDが朝のシステム検診をするブーン……という音だけが響いていた。

そして、やっと仮装のルーツを思い出したらしいクイーンが、確かめるようにゆっくりといいはじめる。

「ローブは魔女で…これが骸骨男、この頭はフランケンシュタイン、靴は……」

「もういいです、わかりました」

手を「ストップ」の形にして前に突き出すジョーカー。

クイーンは何か書いてあるのかと手のひらを覗き込む。

「とりあえず、どれかひとつの仮装にしてくれませんか?ややっこしくて仕方ありません」

「えー!」

不満そうなクイーン。

「決められないよお、そんなすぐには〜」

「決めてください!」

地を這うように低いジョーカーの声。

クイーンは諦めたのか、何事かぶつぶつつぶやきながら部屋に帰っていく。

そして、すぐにジョーカーのいる居間に帰ってきた。

手に大量の衣料品。

「ねえ、どれがいいと思う?」

「は?」

状況がよく飲み込めていないジョーカー。

ぽかんと目の前にどっさりと積まれた衣料品に眼をやる。

「王道は魔女だけど……でもそれじゃ詰まんないし、フランケンシュタインはかっこ悪いよね、服が。だからさ、どれがいいと思う?」

「そんなの知りません!自分で決めてください!」

「決められないからこうして相談しているんだよ、ジョーカーくん。いっそのこと、ジョーカーくんも着ないかい?」

「絶対着ないですから!」

RDは相変わらずスピーカーとモニターをオフにしたまま、朝の点検活動を行っている。




今日も、トルバドゥールは平和。

〜FIN〜

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