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□見知らぬ猫
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塾がなくて早帰りだった今日、ぼくはいつものように砦に遊びに行った。

そしてそこで待っていたのは――。

「あれ、創也?」
「なんだい?」
「砦に猫なんていたっけ?」
「いたと思うかい?」

ハイ、いませんでした。

でも……。

「こんなとこに黒猫がいるよ」
「え?」

創也が素っ頓狂な声をあげた。

それも無理ない。

だって、その猫がいるのはぼくたちのいる部屋――砦の4階なんだから。

真っ黒な猫だ。目は綺麗な金色をしている。
赤い首輪がチャームポイントだ。

おいで、と声をかけるとさして怖がるわけでもなくすたすたと歩いてくる。

抱き上げてもされるがままだ。

「野良猫かな?」
「いや、首輪をしているじゃないか」
「……誰か優しい人が首輪をつけてくれたとか」

創也がはあ〜と深いため息をついて、肩をすくめた。

「内人くん、現実をうけいれたまえ」

すると、腕の中の猫がにゃぁと鳴いた。

「いや、きみにいったんじゃないんだけど……」

創也は苦笑しながら言った。

そして、まじめな顔つきに戻って事務的に言う。

「で、どうする、この猫?」
「……どうしよう……」
「「う〜ん……」」

すっかり黙り込んでしまったぼくらを、猫が不思議そうに見つめる。

その目を見て、ぼくは決めた。

「……好きにさせようよ。もし出て行ったら出て行ったでそのとき。ここにいたいなら、好きなだけいればいい。それで――」
「ここにいる間はぼくたちで世話をする」
「ざっつらいと!」

グッと親指を突き出したぼくを、腕の中の猫と創也が絶対零度の目で見つめる。

この猫、創也に似てるな……。

猫の絶対零度の目を覗き込んだら、パンチというお返しがやってきた。

引っかき傷を押さえて、重大な質問をする。

「で、創也は賛成?」
「……うん。ゲーム作りの参考になるかもしれないしね」

やっぱり、コイツの中心にはいつもゲームがある。

まあ、それでこそ創也なんだけど。

「創也、この猫の名前どうする?」
「クロ」

「1+1=2」というような口調で創也が答える。

うん、まあ創也にしてはいいネーミングだ。

「賛成してくれてうれしいが、その考えは余計だよ」

………。
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