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□さんたくろーす
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クリスマスフリリク夏目 ※会話文が主




夕方、街中。

ライトアップされた木々が目にまぶしい。

「夏目、夏目」

「ん、なんだ」

「そういえば、さんたくろーすとやらにお前は手紙を書かないのか」

「……さんたくろーす?」

ニャンコ先生を抱っこして歩いていた夏目が急に足を止める。

軽やかな音楽が流れている。

「……ああ、サンタクロースか。ううん、書かないよ。昔は『書きなさい』って言われてたけど」

「ふうん、そうなのか」

「それが、どうかしたのか?」

「いいや、なんでもない」

「ならいいけど」

夏目はもう一度歩き始める。

その横を、赤いマフラーをした小さな女の子が追い越して駆けていった。

「なあ、夏目」

「ん?」

「なんで、お前は手紙を書かなくなったのだ?」

「……あのな、先生」

ミミミ、ミミミ、ミソド、レミ。

ジングルベルが、薄暮の中に溶けていく。

「サンタクロースは、いないんだよ」

夏目の声も、薄暮の中に白く消える。

「でも、昔はいたんだろう?いたからこそ書いたんだろう」

「昔はな。……でも今はもういないんだ」

夏目は小さく言う。

「もう、いないんだよ」

そのつぶやきは、ジングルベルと溶けて、12月24日の空に消えていった。


〜FIN〜

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