屑籠


思い付いた話や誕生日ネタや小ネタを(・д・)ノ⌒●ポイッ

何でも詰め込むのでバッチコイ☆な寛大な方のみどうぞ


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◆海堂はぴば 

大雨だった。
天気予報では午後から大雨雷注意報が出ていて「お、もしかして学校早く終わるかも」と淡い期待をしていたけどそう上手くいくわけもなく、たいして雨は降らず強くなってきたのは部活終了後。
傘忘れて徒歩の私は災難だ。
走って帰るにも先に体力が尽きてずぶ濡れになるだろう。

「…風も出てきたし」

呟いてからあ、と後悔して左を盗み見る。
海堂くんと目があってそらされた。

すでに戸締まりされたお店の小さい屋根下で雨宿りしている私と海堂くん。
気まずいったらありゃしない!一年生の時は隣の席になったりもしたけど特に接点もないから会話がまったく出て来ない。地味に距離もある。

「「…………」」

と、思っているのは多分お互い様で海堂くんも私の方を何度か見ている。
だけどやっぱり会話はない。

「(海堂くんも雨宿り…?あ、違った)」

4度目に海堂くんを見てようやく隣にバス停があるのを見つけることが出来た。
海堂くんバス通か…羨ましい。
そして傘持ってるし、いいな。
つらつら思考を重ねていると再び目があって気まずくそらす。何やってるんだろう私たち。

何ともないお互いを気にしつつ雨音を聞いてる時間を過ごしていると赤い市民バスが前に止まる。
海堂くんが待っていたのはこれだろうな。

「…おい、これやる」
「え、え?いいの海堂くん?」

ズイッと渡されたのは青色のチェック柄の傘。
受け取らずにいると手触りの良さそうなタオルまで追加して少し乱暴に持たせる。

「何だか悪い…」
「……じゃあな。風邪引くなよ」
「あ、ありがとうね…!!」

顔も合わせずバスに乗り込む。
不器用でちょっと強引な海堂くん、渡された傘の柄は暖かかった。


今日の雨、明日の晴れ。
 (ちゃんと返しに行かないとね)

*****
拍手に載せていた行き場のないブツ
20分作品

2012/09/06(Thu) 19:48

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