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□ゲスとゲスが混ざり合うと…続編
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「私も死んで、マミーに会いたいアル。・・・苦しいヨ」

屋上で呟いた言葉。
誰も居ないと思っていたのに、何故か言葉が返ってきた。

「…教えてやろうかァ?苦しみがなくなる方法を」

涙を流しながら振り返ると目の前にはあの有名な男。片目に眼帯を着けた高杉晋助。初めて会うが、噂だけは神楽の耳にも入っていた。

「どういう事アルか…?」

「満たされればいいんだろ?教えてやるっつってんだ」

神楽は一瞬考えて、コクリと小さく頷いた。
神楽の反応を見て高杉が薄っすらと微笑む。


・・・・。




「えェェェ!?せ、せ、せ、セックス?」

「何そんなに驚いてんだァ?」

「だ、だって…私そんなのした事ないヨ!それに、本当にセックスなんかでこの私の心が満たされるとは思わないアル」

ひんやりとした風に頬を撫でられながら、神楽と高杉は屋上の冷たい地べたに座り込む。

「騙されたと思ってヤッてみろ。本当だから」

「何処にそんな根拠が・・・」

「根拠は俺だ。・・・俺も去年、大事な人を亡くしてなァ…」

遠くを見つめる高杉の横顔は何処か愁いを帯びていた。

「そうカ…」

「…お前モテるんだろ?相手なら直ぐ見つかるんじゃねェか?」

神楽が高杉の存在を知っていたのと同じように、高杉も神楽の存在は知っていたようだ。

「あ、そういえば呼び出し受けてたアル」

神楽がスカートのポケットから手紙のようなものを取り出した。
高杉がそれを奪って中身を確認する。

「あァ?土方ァ?」

「知ってるアルか?」

それは土方という人物からだった。放課後、2年A組の教室に来て欲しいという内容。

「風紀委員の奴だろ。結構モテる奴だぜ」

「ふ〜ん…じゃあこいつにするアル。でもセックスした事ないから遣り方わかんないヨ」

「んなもん男に任せとけばいい。適当に誘えば男の理性なんて簡単に崩れる」

高杉の言葉に神楽は不安そうに頷いた。











そして放課後、手紙にあった通りに2年A組の教室に向かうと夕日に照らされてオレンジ色の世界がそこにあった。

そのオレンジの光に照らされて真っ黒な髪の毛がキラキラと光っていた。

「土方くん、アルか?」

神楽が呼びかけると、教室の中にいた男の子がふと振り返って神楽を捉えた瞬間彼の頬か薄っすらと赤く染まった。

「あの、呼び出して悪かった」

「ううん。いいヨ」

「俺、一年の頃からずっと好きだった。神楽さんが誰とも付き合う気がないのは分かってる。ただ、付き合いたいとかじゃなくて気持ちを言いたかっただけっつーか…神楽さんが精神的に弱ってる時にこんな事言うなんてどうかしてると思うけど…」

神楽は今までの告白は全て断ってきたのだ。

「…付き合わなくて、いいアルか?そんな中途半端な気持ちなのかヨ」

「え?いや、付き合えるんなら付き合いてぇよ!」

「じゃあ、よろしくお願いしますアル」

「おう。って、はァァァ!?」

「何アルか」

「え・・・いいのかよ」

「いいヨ。私も一目惚れしたアル。たった今」

妖しい笑みを浮かべる神楽に土方は顔を真っ赤に染める。

「じゃ、じゃあよろしく」

「うん!!」

こうして神楽と土方は恋人となったのだ。偽りの恋とはいえ、神楽の初めての恋人だった。




神楽と土方が付き合った翌日。神楽は高杉と屋上に来ていた。

「そんで、次はどうすればいいアルか?」

「家に連れて行ってそのまま向こうが押し倒すように仕向ける」

「ほう…」

「家には誰か居るのかァ?」

「兄ちゃんが居るかもしれないけど問題ないアル」

「兄貴・・・?お前の兄貴ってもしかして他校の一個上の神威か?よく見たら似た面してんなァ」

「うん。近隣の中学校の三年生アル。知り合いアルか?」

「知り合いっつーか、俺そいつに目ェつけられてる」

「あらら、可哀想アルな〜」

神楽の馬鹿にしたような物言いに高杉はチッと軽く舌を打つ。

「よし、明日土曜日だし十四郎を家に呼んでみるヨ」

「もう名前呼びしてんのかよ」

「神楽様のコミュ力の高さを舐めないで欲しいネ」

フンッと高杉が鼻で笑った。


・・・・。


2人の間に沈黙が流れる。
高杉がチラリと神楽の顔を盗み見ると彼女は寂しそうな目で青い空を見上げていた。サラサラと綺麗な髪が風に揺られていて、まるで季節外れの桜が舞っているようだった。










「十四郎!十四郎!」

「あ?どうした?」

制服の袖を引っ張ると土方が呆れたような優しい顔で神楽と顔を合わせた。

「明日さ、土曜日デショ?家においでヨ」

「えェェエ!?い、い、家にか!?」

「うん。無理アルか?」

「い、いや…」

土方が額を押さえて頭を悩ませていた。

「嫌アルか?」

「嫌じゃねぇよ!」

「じゃ、決まりアル」

「は?ちょ、待てって…」

神楽は土方の言葉を聞かないとでもいうように早足で土方の前を去って行った。


そしてあっという間に土曜日になった。

「神楽ぁ、何そんなにめかし込んでるの?」

「今日彼氏が来るアル!」

「あー例の彼ね」

神楽は神威に土方のことを話していた。勿論それが偽りの恋だという事も。

2人で談笑していると家のインターフォンが鳴らされた。

「来たんじゃない?」

「そうみたいネ」

神楽は急いで玄関に出て、土方を迎えた。

「よぉ」

「おはようアル。さ、どうぞ」

「あ、あぁ」

若干緊張した様子の土方が神楽の家へと足を踏み入れる。

「どうも〜」

「あ、どうも。神威さんですよね」

「そうだよ。神楽のこと、よろしくね」

「はい」

土方は律儀に神威に挨拶をする。

「兄ちゃんはほっといていいから、早く私の部屋行こうヨ」

「あ、こら、押すな神楽」

神楽の部屋へと仲良さ気に向かう二人を見て神威は思わずキョトンとする。

「相変わらずコミュ力が高いな神楽の奴。最近付き合ったばっかなのに、あんなに仲良くなるなんて」

神威がそんな事を呟いている一方で神楽達はというと…


「風紀委員って何の仕事してるアルか?」

「そうだな…服装乱してる奴とかを注意したり、遅刻した奴を指導したり、とかか?」

「へ〜大変アルな。ウチの学校結構そういう規則守ってない奴多いもんネ」

高杉を筆頭にという言葉は飲み込んでおいた。

「まぁな…」

はぁーと溜め息を吐く土方の背後に回って彼の肩に手を掛けた。ビクンと土方の肩が震える。

「肩揉んであげるアル」

力加減を間違えないように、と心の中で念じながら土方の肩を揉んであげる。

「お前、上手いな」

「ふふっ。・・・ねぇ、聞きたい事があるアル」

「なんだ?」

「いつ、私に惚れたアルか?」

土方の耳で囁くように言えば、彼の耳がみるみるうちに赤く色付いていく。

「にゅ、入学式んとき・・・。校門の桜の木の下で。お前は覚えてないかもしれねぇが、俺が落としたマヨストラップをお前に拾ってもらったんだ」

(マヨストラップ?何アルかそれ)

「ふ〜ん。そんなに前からアルか・・・」

神楽は肩を揉んでいた手を止めて土方の首に自分の手を巻きつけた。

「か、神楽?」

(・・・なんか、落ち着くアル)

「ねぇ十四郎?私とセックスしてヨ」

「はァァァァ!?お、お、お、お前何言って…」

土方が神楽を引っぺがして、彼女の肩を掴む。

「私を、抱いてヨ」

震える声でそう言った神楽の顔を見て、土方はハッと息を飲んだ。

そして神楽を抱えてベッドへと降ろした。

神楽は初めての体験にドキドキと胸を高鳴らせる。

しかし土方が取った行動に神楽は拍子抜けした。

土方は神楽をベッドに寝かせると、そのまま自分はベッドへ上がらずに神楽に布団を掛けたのだ。

「?」

「お前、最近まともに寝れてないんじゃねぇか?」

「!!!」

土方の言葉に神楽は目を見開く。

(何で、分かったアルか・・・?)

「俺が、ずっとここに居てやる。だから寝ろ」

土方が神楽の頭を優しく撫でた。

(あったかいアルなぁ、こいつの手)

神楽の頬を冷たい雫が伝った。

「十四郎」

「ん?」

「一緒に寝てほしいアル。私の隣で寝ヨ?」

「・・・しょうがねぇな」

一瞬渋ったものの、土方は神楽の隣に入った。
そして神楽を抱きしめてやる。

(十四郎の心臓、凄くドキドキ鳴ってるアル。・・・あれ?これ、私の心臓アルか?)


そんな事を思っていると、神楽は何時の間にか眠りに落ちていた。


目が覚めたときは、目の前に土方の顔があって驚きに身体がピクッと反応してしまった。

すると土方がゆっくりと目蓋を開けた。

「起きたのか?」

「十四郎は、寝てなかったアルか?」

「好きな女が隣で寝てんのに、そう易々と寝れるかってんだ」

その言葉に罪悪感からか、神楽はなんだか泣きそうになった。それと同時に胸が高鳴る。この感情が何なのか、まだ本当の恋などしたことのない神楽には分からなかった。

「ありがとネ。おかげでぐっすり眠れたアル」

「また寝れないときは言えよ。俺がいつでも側に居てやるから、な?」

(優しすぎるアル。高杉・・・私には無理ヨ。この人の心を弄ぶなんて、私にはできないヨ)



神楽はその日、高杉に電話をした。

「あんないい人を私の勝手に付き合わせるなんてできないヨ」

『そうか』

「うん。十四郎とは…別れる、アル」

神楽の寂しそうな声に、高杉は思った。

(もしかして、こいつ土方の野郎に惚れたんじゃねェか…?)

『・・・』

「やっぱ、私には無理なのかもしれないネ」

『でも、それじゃ苦しいままだろ』

「・・・うん」

『明日、俺の家に来い。まずは俺が相手してやる』

「え?」

『それで何も変わらなかったら他に方法を考えればいい。苦しみが少しでも取れたら、土方以外の男共と関係を持て。何れ立ち直れるさ』

「・・・分かったアル」


神楽は通話を切って、ベッドに顔を埋めた。

土方のニオイがして胸がドキドキと高鳴った。

(何アルか、この気持ち)








そして次の日、神楽は高杉の家へと向かった。







「あッ、痛っ!!イタイアル!!」

「…っ、我慢しろ。力抜けっ。全部、入らねェ」

「無理ッ、そんな、無理アル!」

高杉の汗がポタリとベッドのシーツに落ちた。
2人の荒い息遣いが室内に響く。そしてヌチャッという卑猥な音が神楽の興奮を高まらせる。




「ひぁっ!んんッ、あッああああ!!」




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