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□五人の馬鹿
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同じ学年の同じクラスに同じような馬鹿が五人集まること。
それは偶然のようで必然だったのかもしれない。
「暇アルなー」
「暇だなー」
「おい、土方煙草ねェか?」
「ほらよ」
「まじで高杉と土方どっか行けや。のーすもーきんぐ」
上から順に神楽、銀時、高杉、土方、沖田。
今この馬鹿五人がいるのは学校の屋上。暇だ、なんてほざいてはいるが勿論今は授業中である。
「あ、そうだ聞いてヨみんな」
その言葉にみんなが神楽に注目する。なんか言いにくいと思いながらも、内心みんながどういう反応するかちょっとドキドキしながらも、意を決して口を開く。
「私、彼氏できたアル」
ピースを作って四人に突き出してみる。しかし祝福の声はなく、シーンと辺りが静まり返った。不思議に思った神楽は四人の顔をまじまじと見つめる。
銀時は顔面蒼白。高杉と土方はポロッと煙草を地面に落とす。沖田は無表情で固まっている。
ーーー何アルか、この反応。思ってたのと違うアル…
男四人はバッと肩を組んで円になる。
(おいィィィ!どういうことだ!!誰だ神楽の彼氏!お前か高杉!?)
(俺じゃねェ。つーか、抜け駆け禁止だろが!俺達じゃねェだろ)
(じゃ、じゃあ誰だ!つーかいつの間に!!)
(……………)
(総一郎くんんんん!気をしっかり持ってェェェ!)
「おい、何してるアルか。私も仲間に入れろヨ」
神楽が銀時の股下から潜って中央に立つ。四人は肩組を外して明後日の方を向く。
「何アルかお前ら」
なぜこんな態度を取られるのかわからなくて首を傾げる。
「いや、あのよぉ」
漸く土方が頭を掻きながら口を開く。
「その、彼氏って…誰だ?」
「ジミーアル!」
神楽の口から出てきた名前(あだ名)にその場の空気がピシリと固まった。
ヒューッと吹く風が髪の毛を揺らす。
(おい、お前ら…)
(何も言うな銀時。分かってる)
(準備はいいなお前ら)
(待ってろィ山崎の奴…)
「「「「血祭りにしてやらァァァァ!!!」」」」
「っていうのはウッソぴょ〜……あれ?あいつら何処行ったアルか…」
彼氏いるのは嘘だとネタばらししようと振り向いたら、そこには誰一人いなかった。
ぎー、ぎー、と屋上のドアが軋む。
「あ、ジミー終わったアルな。ごめん…」
何かを悟った神楽が青い空を見上げてそう呟いた。
四人の男が惚れた女は同じ人。
それもまた偶然ではなく必然か。
晴れ渡る空に犠牲になった地味男の声が響き渡った。
*end*