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□神楽と涼兄ちゃん
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ここ、帝光中学校では長い夏休みも終わり二学期を迎えた。半袖では少し寒いかな と思われる季節。それぞれの生徒が未だ夏休みの余韻に浸る。


神楽は昼休みになった廊下をぶらりぶらりと歩いていた。すると廊下にいた女子生徒達が黄色い声を上げながら窓から中庭を覗いていた。


なんだろ、と不思議に思いながら窓の方へと近付くと、窓際に立って缶ジュースを飲んでいた男子生徒が神楽に気が付いて話し掛けてきた。こいつは、確か同じクラスの奴だ。名前は知らん。


「お前の兄貴だよ」


中庭を指差しながら呆れたように、そいつは言った。なるほど、道理で女子が騒いでたわけだ。

神楽は窓からそっと中庭を覗いてみると、確かに黄色い頭が見えた。そして、彼の周りには青、水色、赤、緑、紫とこれまた奇抜な髪色が揃っていた。彼等は昼食を摂っているようで、キャーキャー騒ぐ女子生徒をものともしてない。


「ケッ、あんな奴の何処がいいアルか」

「まぁ、兄妹だからわかんねぇんだよ。男から見ても黄瀬先輩はカッコいいぞ」


男子生徒の言葉を聞きながら、神楽はキラキラ輝く黄色の髪を見つめた。


ーーーなんか、ムカつくアル



神楽は男子生徒が持っていた、空の缶を奪って、狙いを定めて思いっきり振りかぶる。そして野球ボールを投げるかのように、その缶を投げ放つ。缶を投げた瞬間、サッとしゃがんで窓から身を隠す。男子生徒は唖然とその光景を見つめていた。



「いってー!!もう、誰スか!?」



兄の喚く声と、彼の周りから笑い声。そして女子生徒の心配そうな声。それが一気に神楽の耳へと入ってきた。



「ちょ、神楽!何してんだよ!」


男子生徒の声を無視して、神楽はしゃがんだ姿勢のまま教室へと戻って行った。














かったるい午後の授業を終え、帰宅部の神楽は早々に帰路につこうと、荷物をまとめる。すると、クラスの子が、神楽に近寄ってきた。



「神楽ちゃん、廊下で先輩が呼んでるよ?」


「先輩?…分かったアル。ありがとネ」



バイバイとその子に手を振って、自分の鞄を持って廊下にでる。まさか、兄が昼間の恨みを言いに来たのか と思ったが、その予想は大きく外れることとなった。



「よォ、てめえがリョータの妹か?似てねえが、可愛いツラしてんじゃねーか」


ーーー………誰ネこいつ。涼兄ちゃんの友達?


首を傾げながら、彼を見つめる。灰色の髪の毛にピアスがたくさんついた耳。所謂不良というやつか。


「誰アルか」

「灰崎祥吾。元バスケ部。お前の名前は?」

「神楽アル。黄瀬神楽」


元バスケ部ということは、やはり兄の知り合いだろうか。
灰崎は口角を上げてニヤリと笑う。



「カグラチャンね。よろしくー」



左手を差し出され、戸惑いながらもその手を握った。それに満足したのか、彼は「また明日なー」とだけ言ってすぐさま去って行ってしまった。神楽はポカンと口を開けながら去って行く彼の背中を見つめる。



ーーーなんだったアルか、あの人




不思議に思いながらも家に帰り、制服のままずっとテレビを観ていた。すると、ガチャッと鍵が開く音がした。両親は仕事で出張中のため、部活を終えた兄が帰ってきたのだろう。もうそんな時間か、と思いながら夕食の準備に取り掛かる。



「ただいま」


リビングに入ってきた兄が台所にいる神楽を見つけて、しまった というような顔をした。


「おかえりアル。何ヨその顔」

「いや、夕食食べてきちゃってて…」


あっそ、とあからさまに溜め息を吐く。まぁ、まだ準備はしてなかったんだけど。それに、一人分でいいから楽だ。


「ごめんっス」

「いいから風呂入ってこいヨ。汗の匂いが臭いアル」


鼻を摘まんでシッシッと追い払うと、彼は素直にお風呂場へ向かった。
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