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□種族なんて関係ない
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歌舞伎町のスナックお登勢の二階にある何でも屋"万事屋"のソファで神楽はグータラしていた。外は素晴らしいほどの晴天だった。しかし、真夏の暑いこの季節にこの太陽の光は神楽にとっては少しキツイ天気だった。
「うぁ〜何アルかこの暑さ。脳みそ溶けそうアル」
「もう溶けてんだろ」
ソファに寝そべっている神楽の頭をバシッと叩いて銀時は神楽がいるソファの向かいにあるソファにのっそりと腰掛けた。それと同時に雑用を終えた新八が居間に入ってきた。
「はぁー暑いですね……って神楽ちゃぁぁぁん!?」
「んだヨ新八。騒ぐなヨ消えろ」
「暑くなるから でっかい声出すんじゃねぇよ失せろ」
「なんだよお前らァァァァ!それが洗濯、掃除、その他雑務全てやってあげた僕に対する態度かァァァァ!」
銀時と神楽の罵声に怒りを露わにする新八。2人は聞きたくないとでも言うように耳を塞いだ。そんな2人に暑さのせいもあって、怒る気力を無くした新八が銀時の隣りに腰掛ける。そして神楽に視線をチラチラと向けて口を開いた。
「か、神楽ちゃん。なんて格好してんの。ぶ、ぶ、ブラジャーとスカートだけだなんて…」
頬を染めながらそう言った新八に、銀時も神楽もキモいものを見たような目を向ける。
「何言ってるアルか新八」
「あれ水着だぞ」
銀時が神楽を指差してそう言った。神楽はピンクで花柄の下はスカートタイプになってるビキニを着ていた。
「な、なんで水着着てるの」
水着だと分かっても、まともに神楽を見ることができない新八。なんせ神楽が万事屋に来て約四年経つ。幼児体系だった神楽も今やボンキュッボンのナイスボディな女になったのだ。四年経っても未だにチェリーな新八には刺激が強いだろう。
「暑すぎるからに決まってんダロ。この暑さの中でチャイナ服なんて地獄ヨ」
神楽は上体を起こして、いつものお団子頭をおろしている伸びた長い髪の毛を掻き上げて新八を見た。その時丁度目が合った新八は顏を真っ赤にさせた。四年前はゲロを吐くような少女だったのに、今は色気まで纏うようになった。
「「新八キモい」」
「いや、あの、でもさ依頼人が来たらどうすんの神楽ちゃん」
2人の罵声は取り敢えず無視して眼鏡をカチャカチャと何度も押し上げる新八。動揺しているのがバレバレだ。
「そもそもこの暑い中仕事なんて持ってくる奴いないアル」
「まぁもしもの時は見物料きっちりとるから」
「さすがアル銀ちゃん」
「いや、それ駄目でしょ」
馬鹿みたいな遣り取りをしていると、突然万事屋のインターホンが鳴り響いた。暑くて誰も立ち上がる気力がなかった。お前が行け!いいやお前が行け!などと押し付け合いをしているとガラガラと扉が開いて、複数の人が入ってくる足音がした。
「お客さん来ちゃいましたよ」
「おっ、向こうから来てくれた」
「これで動かなくて済むネ」
「じゃねぇだろォォォ!!」
バンッと居間の扉が開かれた。
「あれ、土方さん。それに近藤さんに沖田さんまで」
神楽と銀時は心底嫌そうな視線で真選組の三人を見る。その真選組の三人といえば、三人とも顏を赤らめて神楽を凝視していた。
「おい、税金泥棒ども!何ウチの神楽ちゃんジロジロ見てんの。見物料取んぞ」
「まじキモいアル」
「うるせェェェ!!てめぇがそんな格好してんのが悪いんじゃねぇか」
一番最初に我に返った土方が怒鳴り声を上げる。近藤は俺にはお妙さんが俺にはお妙さんがと呪文を唱えていた。沖田は未だに顏を赤らめていて、片手で口元を覆っていた。
「あ、あの…」
そんな三人の後ろから控え目な声が聞こえてきた。その声に神楽が反応する。立ち上がって土方と沖田を押し退け、近藤を蹴飛ばした。
「そよちゃん!!」
三人が退いて、そこに居たのはこの国の姫君である そよ。神楽の親友だ。2人は手を取り合って久々の再会を喜んだ。
「税金泥棒なんか連れてどうしたアルか?」
「神楽ちゃんにお話があって来たの」
神楽が不思議に思っていると、新八が2人のもとにやってきた。
「姫様お話なら居間でしましょう。どうぞ座って下さい」
「ありがとうございます」
神楽はそよの手を引いて居間へ入った。そして神楽は銀時と新八の真ん中に座り、そよは向かいのソファに座った。そよは、ソファの脇に立っていた土方と沖田を座るように促した。沖田はすぐにソファに座ったが、土方は失礼なことだと思ったが渋々といった感じで座った。そよを挟むように左に沖田、右に土方が座った。
「あの、近藤さん大丈夫ですか」
「大丈夫アル。ゴリラはちょっとお寝んねしてるのヨ」
「お前のせいだろクソチャイナ」
「あんだとクソサド」
バチバチっと火花を散らす神楽と沖田。ちなみに近藤は神楽に蹴飛ばされたため、気絶して床に転がってる。
「やめろお前ら。今日は姫様がチャイナ娘に話があるから来たんだ。喧嘩すんな」
土方にそう言われ、神楽は大人しく引き下がった。沖田は一瞬ムッとした表情をしたがすぐにいつものポーカーフェイスに戻った。
「何ですか神楽に話って」
「実は…神楽ちゃんにお見合いをしてほしくて」
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