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□変化する心
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ーーー高校三年の春。私は人生で初めて告白をした。















[第一話 告白]










「私Z組の神楽といいます。沖田くんのことが好きアル。付き合って下さい」



2人の男女以外には誰もいない 静まり返った屋上。神楽の橙色に近いピンクの髪の毛が、少し肌寒い風に吹かれて靡いていた。



目の前に立つ男は目を瞑って告白の返事を待っている神楽を無表情で眺めている。




「Z組…?ハッ…俺、馬鹿な女嫌いなんでィ。あとてめぇみたいな地味な女もな」


神楽はそっと目を開く。目の前に立っていた男は既に神楽に背を向けて屋上から去っていた。神楽は今の自分の格好を見てみる。


スカートの下には赤いジャージ。顔には瓶底の分厚い眼鏡。



ーーーこれ、取っておけば良かったアル



いや、例えジャージを脱いで瓶底眼鏡を取っていても馬鹿な頭はどうしようもない。







ここ銀魂高校ではA〜Dまでクラスがあって、Aから頭が良い順にクラス分けされている。そして、A〜D飛んでZ組が存在する。このZ組は学校が手に負えない馬鹿や問題児が集められる、いわば学校のゴミためのようなクラスである。沖田は一番頭がいいクラスであるA組。



A〜D組の奴は皆Z組を馬鹿にする。いや、実際馬鹿なのだからしょうがないけど。神楽にとっては、掛け替えの無い大切な仲間がいるクラス。


「あいつ、笑いやがったアル」



Z組と聞いて、沖田総悟はハッと鼻で笑った。悔しい。悔しい。悔しい。


Z組を馬鹿にされたことも勿論悔しいけど、自分の大事なものを馬鹿にされたのにも関わらず、沖田を嫌いになれない自分が一番悔しい。





ーーー振られてこんなに涙が出るとか、私どんだけアイツのこと好きだったアルか





神楽の真っ白い頬を大量の涙がつたって、地面にぽた…ぽた…と染み込んでいく。




こんな顔みんなに見せられないと思い、瓶底眼鏡を取って 急いで制服の袖でゴシゴシ拭う。


よしっと顔をパチンと叩いて気合いを入れる。








ーーーアイツには泣いたことバレそうアルな



















ガラガラとZ組の扉を開けて中に入る。昼休みだったから教室にはあまり人がいなかった。神楽は何時ものように、一番窓側の列の一番後ろの席に座っている高杉のもとへ歩み寄った。



「……その調子じゃ、ダメだったみたいだな」



まだ何も言ってないのに、高杉は神楽の顔を一瞥した後、そう言った。



「フン。別にあんな奴どうでもいいアル」


「泣いたくせに何粋がってんだか。二年間も好きだった奴をそう簡単に諦めれるかよ」





ーーーやっぱり、コイツには隠し通せないアルな





神楽が思いっきり高杉に抱き着いたら、頭をポンポンと撫でてくれた。





神楽と高杉は中三の時からの親友。高校に入って、神楽が沖田に恋をしてからもずっと相談に乗ってくれていた。ちなみに、高杉は頭はA組レベルだが、素行が悪いのでZ組にいる。





「今日は振られた記念にバイキングに連れて行くヨロシ。勿論お前の奢りでナ」


「図々しいなお前」



文句を言いながらも結局バイキングに連れて行ってくれるであろう高杉。神楽にとって高杉は人生でたった一人の親友だ。


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