long

□変化する心2
1ページ/11ページ








[第一話 テスト]







「うがぁぁぁ遅刻するアルぅ」

「おい、チャイナもういくぜィ」



「待ってヨ!」


「ったく、早くしろよ」



遅刻ギリギリの時間に起きた神楽。それを笑いながら待っててあげてる沖田。


最近よく見かける光景だ。



「ほら、鍵掛けろ」

「むぅ…わかってるアル」


急いでローファーを履いた神楽は鞄から白い犬のキーホルダーが付いた鍵を取り出す。


「あ!また間違えたアル」

「……………」


神楽は間違えて高杉の家の合い鍵を取り出してしまい、急いでそれを鞄に直してこの家の鍵を取り出した。

沖田はその白い犬が付いたキーホルダーを見て顔を顰める。



ーーーほんと、その鍵誰の家のなんでィ…











神楽と沖田は学校が近くなったところで別々に歩き出した。一緒に住んでいることがバレたりすると色々面倒だからだ。




「あっ!沖田くんおはよう!」

「沖田くん一緒に行こう!」

「ちょっと、抜け駆けしないでよ」



神楽の幾分か前方を歩いていた沖田の周りに女子が群がる。沖田は無表情で対応していた。


少しムスッとしながら頬を膨らましてその光景を眺めていると、神楽の背後から手が延びてきて神楽の頬をブシュッと潰した。


「今日も旦那様と出勤かァ?」


「しんしゅけぇ!」


現在進行形で頬を潰されているので上手く喋れない神楽。そんな神楽を見てクスリと笑った高杉。そして笑った後パッと頬を離してやる。



「てか、旦那様じゃないアル!」


歩き出した高杉を慌てて追いかける神楽。そして高杉の横に並んで2人で学校へ向かう。



「そういや、もうすぐ夏休みだなァ」

「聞けヨ!」


「あ、その前に期末テストか」



高杉の言葉を聞いた神楽がだんだんと顔を青ざめさせる。



「うがぁぁぁあ!テストのことすっかり忘れてたアルゥ!!すっかり気分は夏休みだったネ!どうしてくれるんだコラァ!」



「うるせェ」

隣で頭を抱えて叫ぶ神楽の脳天に一発決め込む。




「テスト〜テスト〜」



全身脱力して呪文のようにテストと唱える神楽を呆れながら引きずる高杉。ようやく教室の前まで着いたところで漸く神楽が我に返った。



「おはヨ〜」


「なによまた夫婦で出勤してきたの?羨ましいわね。私も銀八先生とキャーーーー!!」



何を妄想したのか知らないが、さっちゃんが床で奇声を発しながらゴロゴロと転がっている。


邪魔だったので高杉も神楽もさっちゃんの背中を踏んずけていつもの席に座った。さっちゃんの興奮するじゃないのぉぉぉ!という叫びは呆気なくスルーされた。



高杉と神楽が席に座ったのと同時に銀八が教室に入ってきた。



「おーいてめぇら席に着けー。そこの床で転がってる雌豚もさっさと…まぁ、面倒だからいいや」


「何よ先生!もっと罵り「早速HR始めんぞ。お前らもうすぐ期末テストだ。これで赤点とった奴は夏休み前半ほぼ補習な」


その言葉に教室から、えーーーーというブーイングが沸き起こる。神楽はブーイングを起こす余裕もないのか、頭を机に突っ伏して項垂れていた。

そんな神楽の様子に高杉は溜息をつく。そして自分を扇いでいた下敷きで神楽の頭をつつく。



神楽は机に突っ伏したまま顔だけ高杉の方に向ける。


「何ヨ。お前が教えてくれるアルか?」

「沖田に教えてもらえよ。一緒に住んでんだろ」



高杉にだけはあの事件の後、沖田と住んでいることを教えた。



「アイツが教えてくれると思うアルか?」

「言ってみなきゃわかんねェだろ」



それもそうアルなと思い、神楽は沖田に勉強を教えてと言ってみることにした。

















「はぁ?嫌に決まってんだろィ」


「…………。」



夜になって沖田の部屋を訪れた神楽。


あっさり一刀両断された。





「ぎぃぃぃぃんちゃあああん!」



神楽はリビングでテレビを観ていた銀八に飛びついた。うおっと声をあげて銀八が目を丸くする。



「私明日から勉強合宿するアル。だから、テスト終わるまで家帰らないネ」

「おぉそうか。いい心意気だな。で、誰んとこに泊まるんだ?志村家か?柳生家か?ま、まさか高杉んちとか言わないよな?」


高杉んち、と言った時点で汗をダラダラと流し始める銀八。そんな銀八を不思議そうに眺めて口を開く神楽。

「何言ってるネ。晋助んちに決まってんダロ!」


「ダメェェェェェ!!絶対ダメェェ!!野郎の家に泊まるなんて絶対許しません!」

「でも、沖田が勉強教えてくれないって言うから、仕方なく…」


「沖田くぅぅぅぅん!!ちょ、降りてきなさい!!!」



銀八が二階に向かって叫ぶと、沖田が面倒臭そうにしながら階段を降りてきた。神楽は作戦成功といわんばかりにニヤリと笑う。



「なんでィ旦那」

「沖田くん!神楽に勉強教えてやって!!」

「嫌に「じゃねぇとお前の国語の単位やらねぇから!!」

「チッ…きたねぇ。分かりやした、やってやらァ」


その言葉に何故か神楽ではなく銀八がホッとする。よっぽど高杉の所に泊まらせたくなかったようだ。








神楽と沖田が勉強を始めてから5日が経った。いよいよ明日はテスト初日。


「で、これはこっちに代入」

「は?なんでヨ」

「そういう公式でィ」

「わけがわからないアル」



他の教科の勉強は終わり、神楽が最も苦手とする数学に手間取っている。


時刻は只今23時18分。だいだい神楽は夜の10時には就寝しているので、だいぶ瞼が重くなってきている。



「むぉっ解けたアル!」


「やれば出来んじゃねェか」


神楽の頭を乱暴に撫でる沖田。神楽は平静を装いながら内心では凄くドキドキしていた。



ーーー沖田が私に触ってるアルぅぅ!




_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ