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□変化する心 番外編
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[第一話 初対面]






ヒラヒラと桜が舞う季節。今年中学生になる子達にとってはおめでたい時なのだが、今年中三になる神楽にとっては受験という名の地獄が待ち構えていて、おめでたくも何ともない。



そして今日、三年生のクラスが発表される。現在神楽はボーッとしながら先生から自分のクラスを告げられるのを待っているところなのだ。





「えー神楽さんは、5組です」



「うそ!神楽ちゃんと離れちゃったよ」
「ほんとだぁ…嫌だよ」

「え?マジでか!みっちゃんもさつきちゃんも違うクラスアルか!?」



最悪アル〜と言いながら机に突っ伏す神楽。みっちゃんとさつきちゃんは神楽が一番仲良しな友達だ。



「はい、それではみなさん自分達のクラスに移動して下さい」


先生の言葉にみんなそれぞれ新しいクラスへ移動した。

神楽も落胆しながらノソノソと移動する。











「はぁー仲良い人いないアル」



新しいクラスで席に着いた神楽。席は窓側から二番目の列の一番後ろ。神楽は辺りをキョロキョロ見渡すも知り合いを見つけることはできなかった。



ーーーまぁ…今から仲良くなればいいネ





神楽は自分に気合いを入れた。本来神楽は友達作りが人より秀でていたので新しいクラスでも難無くやっていけるだろう。



まずは隣の人から話し掛けようと左隣を見る。



「私神楽アルよろしく!元何組アルか?」

「…よ、よろしく…。元1組の池上さやかと言います」



「さやかちゃんアルか、よろしくネ」



そうして神楽は前の席の人、斜め前の席の人と話し掛けていき最後に右隣の人に挨拶しようとしたら、そこには人が座っていなかった。


まだ来てないのかなと思っているうちに、新しい担任の先生が教室に入ってきてHRを始めてしまった。



ーーー休み、アルか?




「それじゃ、次はみんなに自己紹介してもらおうかな。三年生ということで、知り合いが多いかもしれないけど一応ね」




神楽は面倒くさいと思いながらも何を言うか考えていた。


「じゃあ次〜」

「はい!10番神楽です!この瓶底眼鏡は伊達アル。頭よく見えるように掛けてますウッス」


神楽の自己紹介に笑いが起き、一安心する神楽。

「やっぱ神楽ちゃんっておもしろーい」

「噂通りだな〜同じクラスになれてラッキーじゃん」


生徒達のそんな言葉が聞こえてきた。どうやら神楽のことを知っている人は結構いるようだ。




神楽が満足しているうちに、次の自己紹介が神楽の右隣の奴の番になった。しかし、先程も言ったように隣の人は来ていない。


「えっと、そこの空席は高杉晋助だ。みんなも顔ぐらい知ってるだろ」


そう先生がいうとクラスがざわめいた。


「え?まじかよ最悪」
「あの高杉と一緒かよ」
「ちょっと恐いよね」
「私この前睨まれた〜…」





そんなクラスメートの呟きを聞きながら神楽は脳をフル稼動させる。



ーーー…誰だっけ?




なんか聞いたことはある。というかよく聞く。けどどんな人物だとかどんな顔だとか、そういう情報は全く思い出せない。



あとちょっとで思い出せるというとこまで来て、考えるのを止めた。お腹が空いたからである。




そして丁度いい具合に自己紹介が終わって、さらにはHR終了のチャイムが鳴った。

神楽は購買にパンを買いに行こうと、先生よりも早く教室を出て廊下を走った。ひと気のない階段を飛ばし飛ばしで降りる。

すると、階段近くの空き教室からガタッゴンッという大きな音が聞こえてきた。興味をそそられた神楽は体制を低くしながらそっと空き教室の扉を少しだけ開けた。



「ごめ、ごめんなさいっ」

「あ?じゃあ弁償してくれんのかァ?」

「む、無理ですっお金ないですっ」


神楽が見たのは眼帯を付けた如何にも不良っぽい男子と、彼に精一杯土下座してるひ弱そうな男子。
教室の机や椅子は倒れたりゴチャゴチャになっていたりした。


「ふざけんじゃねェ」


眼帯野郎が土下座してるひ弱そうな男子の頭を踏み付ける。そこで神楽の中の何かが切れた。



「頼もぉーーー!」

神楽はそう言いながら勢いよく扉を開け、ズンズンと歩いて二人に近づいた。

眼帯野郎は頭を踏み付けていた足をどけて神楽に睨みを効かせる。



「なんだてめェ」

「2年6組11番じゃねーや、3年5組10番神楽アル!」

「……………何の用だ」

「その男子が何したか知らないけど、それ以上その男子を傷つけるなら先に私の相手するヨロシ」



神楽は眼帯野郎に向かってファイティングポーズをとるも、眼帯野郎は鼻で笑っただけで神楽の相手はしなかった。



「俺ァてめェにゃ用はねェ」

「私はあるネ」

「チッ。おい、本郷今回は見逃してやる。でも二度と俺の前にそのツラ見せんな」



眼帯野郎は本郷と呼ばれたひ弱そうな男子にそう吐き捨てて空き教室を出て行った。
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