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□右の彼と左の彼女
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銀魂高校を卒業したのは何年前だっただろうか。あれは、確か…。
「五年前アルか?」
「まだそんな経ってねェよ。三年前だろ」
あぁ、まだ卒業して三年しか経ってないのか。
居酒屋のカウンターで高杉の左隣りに座って、アルコールを摂取する。高杉は日本酒を好んでおり、私は専らビールのみだ。
今日はたまたま私の仕事の休みと高杉の大学の休みが重なったため、こうして居酒屋で二人して飲むことができた。
なぜこの二人かというと、銀魂高校を卒業して一年後の3zでの集まりの時、酔っ払った私を 当時家が近かった高杉が送ってくれた。その日から、なんとなくで付き合い始めた私達。酔っ払ったノリだったかもしれない。しかし、これがまた意外なもんで、喧嘩も多々あれど中々順調に交際が進んでいるのだ。
「灰皿くれ」
「ちょっと、外に出てから吸ってヨ」
文句を言いながらも、目の前の枝豆の横にあった灰皿を取って彼に渡してあげた。
「さんきゅ。酒飲んだ後は吸いたくなんだよ。ま、おめェにゃ分からねェだろうが」
「んなもん分かりたくもないアル」
高杉がわざと私に向かって煙草の煙を吐き出してくる。コノヤロウと思い 、咳き込みながら 手でその煙を払った。その様子を高杉はクククッとおかしそうに笑った。
「お前は気楽そうでいいアルな」
「まァ、大学生なんてこんなもんだろ」
「私も大学行けば良かったかナ…」
頬杖をつきながら、ビールをぐびっと飲んだ。高杉はそれを横目で見ながら灰皿に煙草を押し付けた。
「お前は頭が足りねェから無理だな」
「くっ、図星過ぎて言い返せないアル」
「働くのも楽しそうだと思うけど俺ァ」
「そうネ。でも、セクハラ上司がいるのはウザイアル。まじ死んで欲しいネ」
上司から受けたセクハラを思い出して、ついついビールのジョッキを握り潰してしまいそうになる。
「セクハラねェ…」
高杉が舐め回すように左に居る私の全身を眺める。
なにこいつキモい。
「まァ、随分成長したもんなァ」
「おうヨ。まじパーフェクトボディーじゃネ?」
「おー」
「ねぇ聞いてる?ちゃんと聞いてる?」
「俺ァもうちょい肉があってもいいと思うぜェ」
高杉が私の頬をプニッと摘まんだ。結構な力で摘まんできやがって、痛くて涙目になる。
「いひゃいあう。はにゃへ(痛いアル。離せ)」
「あ?なんて言ってるか分からねェ」
「ほまへ、まいでひね(お前、まじで死ね)」
「あァ?てめェの彼氏様に死ねたァどういう了見だァ?」
分かってんじゃねぇかァァァ!!と心の中で盛大に突っ込んだのは言うまでもない。取り敢えず平謝りして、漸く手を離してもらった。ひりひりと痛む頬に、冷たいビールジョッキをあてる。
「なァ」
さっきまでの雰囲気とは打って変わって急に真剣な表情になる高杉。
「なにヨ」
「俺が大学卒業して、親父の会社継いだらさ」
「うん」
「結婚しようぜ」
私達の2人の間だけに静寂が訪れる。もちろん私達意外の客はガヤガヤと騒いでいるのだが、そんな音も私の耳には届かなかった。
「…お前、ムードもへったくれもないアルな」
「俺達にゃピッタリだろ」
「否定はしないアル」
「返事は?」
私は右隣りにいる高杉の顔を見た。すると、彼と視線が交わる。
「もちろん、受けて立つネ」
「受けて立つって、、、まァてめェらしいな」
2人で顔を見合わせたまま、クスリと笑った。
*end*