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□追試
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ザワザワとざわめく教室。神楽は赤いペンで17点と書かれた解答用紙を握りしめる。

「今回赤点の者は3日後の追試で60点以上とらないと留年の可能性大じゃきー頑張るぜよ」

数学の教師 坂本。通称バカがアハハハハと笑いながらそう説明する。

ーーーいやいや、笑いごとじゃないぜよ!!60以上とか無理に決まってんダロォォ!


「姉御ォォ!!」

「あら神楽ちゃんどうしたの?」

神楽がこのクラスで一番慕っている志村妙に抱きつく。その際にお妙の答案をチラリと覗くことも忘れない。

「あ、姉御すごいアル!赤点じゃないネ!」

「やだ恥ずかしい。今回もギリギリセーフだったわ。神楽ちゃんは?」

「ギリギリどころか完全なるアウトネ。どうしヨーーー」

「なんでィチャイナ。てめェ追試か?」

ちょうど近くにやって来たライバルの沖田がちょっかいを掛ける。

「うっせぇアル!どうせてめェもギリギリセーフだろうが!!」

「ギリギリでもセーフはセーフでィ。あーあ、チャイナ留年か〜かわいそー」

憎たらしい言い方に思わず手が出る。さらりと避けられて、さらにムカついて今度は蹴りを繰り出す。

「神楽ちゃん、そんなことやってないで勉強した方がいいんじゃないかしら」

お妙にそう促され、渋々沖田との喧嘩を止めた神楽。

「どうしヨ…あ、トシは?」

「土方さんも俺と似たり寄ったりでィ。残念だったな」

「クソ。見た目に反して頭悪いとか…マヨネーズの摂り過ぎなんじゃないアルか?」

向こうの方でマヨネーズ馬鹿にすんなァァァ!という突っ込みが聞こえてきた気がするが、もちろんそんなものは無視するに限る。


「さすが高杉だな。お前また100点とは、一体いつ勉強してるのか教えてほしいものだ」

神楽達がいるちょっと後ろの方で桂のそんな声が聞こえてきた。神楽は目をキランと光らせて彼等の下へ飛びつく。

「高杉っっ!」

神楽の声に高杉は片眉を上げながら首を傾げた。

「一生のお願いアル。私に勉強教えろ!」

なんで命令口調?という誰かの突っ込みはスルーさせてもらう。

「はァ?」

「追試までの期間でいいアル。まじお願い。酢昆布あげるから」

戸惑う高杉に、強引に言い寄ってついに彼の了承を得ることができた。


「やったアル〜これで安心ヨ姉御〜!!」

お妙にぴょんぴょん跳ねながら近づく。するとお妙は神楽に手招きをした。頭に疑問符を浮かべながら、妙に顔を近づける。

「大丈夫なの?神楽ちゃん。高杉さんって性格が悪いって聞いたわよ。無愛想だし、危ないわよ」

「大丈夫アルヨ!そんなことより留年の方が嫌ネ。まぁ、確かに高杉とあんまり喋ったことないから気まずいけどナ」

「そう。神楽ちゃんがいいならいいんだけど。今日から見てくれるんでしょ?頑張ってね」

「うん!」





そして、放課後になり神楽は高杉と約束していた図書室へと向かった。若干緊張しながら図書室のドアを開けると既に彼は来ていて、眠そうな顔を神楽に向けた。


「答案見せろ」

神楽はバックの中に突っ込んでいた、少しぐちゃぐちゃになった答案を取り出して高杉に渡した。

高杉はザッとそれに目を通した後、それを神楽に返した。


「17点…」

「言わなくていいアル…」

「まぁ、ザッと解答見たけどよォ。あとちょっとってとこが結構あったぜ。それさえ完璧にすれば60は超えるだろ」

「ほ、本当アルかぁ!?」


ということで、高杉の数学講座が始まった。


「これ、こっちに代入」

「おぉ!確かに、あとちょっとだったアルなぁ」

「んで、これ…」

「ハッ!これ因数分解しとけば簡単じゃネ!?」

「おー分かってんじゃねェか」

「やばいアル。天才への道のりが近づいて来たネ」

んなわけねェだろ、と言って高杉がフッと笑った。


ーーーこいつも、こんな風に笑うんだナ。


彼の笑顔が珍しくて、思わずジッと見つめてしまっていた。

「なんだァ?」

「いや、お前も笑うんだなぁって。笑った方がかっこいいヨ」

無意識でそんな言葉が出てしまった。
高杉は神楽から目を逸らしながら頬を掻く。

「もしかして、照れてるアルか?」

「………………んなわけねェ」

「すっげー間があったヨ。照れてんダロ。完璧照れてんダロ。高杉くん、かーわーうぃーうぃー」

「うっせェ」

ケラケラと一頻り笑った神楽。

「高杉って以外と絡みやすいアルな〜」

「そりゃお前の性格がそうさせてんだろ」


神楽は目を丸くさせて高杉の顔を見る。彼の隻眼と視線が交わった。

「ほ、褒めたって酢昆布はやらないアルからな!!」

「酢昆布はいらねェ。好きじゃねェ」





それから、毎日のように高杉と神楽は放課後一緒に過ごした。

そして、追試当日。


「やばいアル。緊張するネ」

「心配ねェよ。今まで通りにやりゃァ……頑張れよ」


高杉が神楽の頭をポンポンと叩いた。

「っ!!な、な、な、何するアル、か」

先程よりも高鳴る心臓と、熱くなる頬。

「追試終わったら、ご褒美やる」

「ま、まじでか!?」

「あァ、とっておきのをな」


ニヤリと笑った高杉に、神楽の心臓は破裂寸前。


ーーー治まれェェェ!私の心臓ォォォ!!


「わ、私も、お、お前にお礼しなきゃナ」

「…楽しみにしてるぜェ」








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「あら、神楽ちゃんと高杉くん付き合ったの?良かったわね」

「うん!高杉が私のことどうしても好きだって言うから」

「言ってねェ」

「まぁとんだ馬鹿ップルね」

「お妙さーーん。俺ともそろそろ馬鹿ップぐはぁぁあああ」


「ゴリ、御愁傷様ネ」

「………神楽、そろそろ帰るか」

「うん!」




*end*

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