助けながら踊る

□時間帯
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放課後、部活をやろうにも二人は用事で帰り、俺は部室の掃除をしていた。
いつもヒメ子に任せているが、俺も部長だしたまには掃除をやってみようかと思った。
一通り俺なりに済んで、ふと窓の外を見た。空は赤に近いオレンジに染まりつつ、日が落ちている。少々朝より寒く、そろそろ帰り支度をしようと考えて前を見た。
そこには、木にもたれ掛かっている名前ちゃんが居た。暗く、寂しそうに空を見上げ、今にも泣きそうだ。

「名前ちゃん…」

小さく呟いて、気付くのを待つが小さすぎる。暫く彼女に魅入っていた。彼女の見せないその表情に、それ以外の全て動作を忘れたかのように、そこから動かず見ていた。
彼女から視線を反らしたのは、辺りが暗くなってからだ。彼女は、酷く顔を歪めていた。そして、木から離れて俺に気付かずに去った。

空は薄気味悪い藍色に染まりつつある。はっとして帰り支度を早めた。
帰路を歩き、先程の事を思い出す。彼女は何をあんなに苦しんでいるのか…

「名前ちゃん…」

また小さく呟いた。
彼女は朝にはまた、笑顔で俺達に笑うだろう。
我慢しなくていいんだよ…不意にそう言葉が浮かんだ。言うべきか、言わないべきか

END 2010.1/29
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