助けながら踊る
□朽ちる
1ページ/3ページ
キスした後の二人は、無表情でお互いに背いた。もしかしたら、お互い苦い気持ちのまましたのかもしれない。
「終わりだね」
「そうだね」
赤い帽子が机に置いてあるのを見る。目頭が熱くなっている気がした。鼻の奥も痛い。
「これで終わりなんだな」
「そうね」
お互い名残惜しく、今までの思い出を思い出していた。全部輝かしい大切な思い出だ。
「ねえ」
「ん?」
「唇、熱かった…」
唇をなぞって、キスを思い出す。顔が赤くなるのを感じて、頬を触った。手が心地好く冷えていた。
「名前」
「え?」
「唇」
「うん」
「柔らかかった」
耳が熱くなった。
お互い顔を合わせず、ぽつぽつと話す。
「甘かったかも」
「私も」
「そうか」
また先程の光景が蘇る。
近付く顔、目を閉じると、唇に……
「もう変わったのかな」
「変わったかも」
また唇をなぞって、思い出す。
心がきゅんとする。