クロスワールド
□第一章
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6:結ばれる心
えっと、この《トリティア王国》の街並みは賑やかで建ち並ぶお店も多くて、いつもながらの活気ある雰囲気を漂わせていた。
私はぴったりとクナキくんにくっついたまま、過ぎ去る街並みを指差してはクナキくんと楽しく街中を歩いていた。
美味しそうな匂いの漂うレストランや綺麗な装飾品が並んだ小物屋、美しい花を咲かせている花屋、不思議な物を売っている雑貨屋。
いろんな光景を私はクナキくんと一緒に刻んでいた。
途中、クナキくんの知り合いの綺麗な大人な女性が声をかけて来た時は正直戸惑ったけど、可愛い子ね♪とクナキくんを放置して2人で話題が弾んでしまった。
歩けば30分の道のりを二時間近く寄り道をして、私は少し疲れながらもクナキくんの暖かさを身に刻んでいた。
このままクナキくんとずっと一緒にいれたら…。
私は残る不安に泣き出しそうになりながら残り少しの道を進んでいた。
と、流石に感づいたのかクナキくんは足取りを止めると、心配そうな顔で私を見つめた。
「…リュイ。…泣いてるのか?」
「…」
私は首を横に振ったけど、こらえきれない悲しみにそっと一筋の涙を流した。
急に私の手を引いたクナキくんは、噴水の近くにある木製の椅子に私を座らせると、その隣に自分も座った。
夕暮れの広場は人気が無く、ただ落ちていく夕日が私たちを照らしていた。
クナキくんは綺麗な水色の絹のハンカチで私の涙を拭くと、そっと私の背中に腕を回した。
その手は暖かくて、少しだけでも私の不安を取り除いてくれた。
「…クナキくん。ありがとう…」
私はクナキくんの肩に身を任せるとまた、一筋の涙を流した。
「…リュイ。…俺はあまり上手くは言え無いけど、…泣きたいときは泣いて良いぞ…」
私はうん。と頷きながら一つ、二つと涙を流し始めた。
「…クナキくん。デート…楽しかったよ♪…」
私は涙を拭くと、無理な笑顔でクナキくんを見つめた。
少し照れくさそうなクナキくんは笑顔を返すと、そっと私を抱きしめた。
いつも以上に暖かく、そして切なく。
私はクナキくんを抱きしめると、こらえきれずに小さな声を上げて泣き始めた。
「…クナキくん…。…私、もっと…もっと君と一緒にいたいよっ!」
溢れる思いに耐えきれない様に、私は涙が止まらなかった。
クナキくんとの大切な思い出が…全て、無くなる…。
そして、私自身も…。
「…リュイ」
クナキくんは私の背中をさする様に手を動かすと、いっそう強く抱きしめた。
「…俺も、リュイとずっといたい…。…この先も…。…だからって今諦めて立ち止まったら叶う物も叶わなくなるぞ…」
私は泣き崩れた顔を上げると、クナキくんの顔を見つめた。
その顔は絶望に満ちた私を吸い寄せるかの様に希望に満ち溢れ、何よりも暖かく、優しかった。
「…私、もう弱音は吐かないよ。…だからクナキくん…」
私は流れる涙を拭きながら続けるように…。
「…私を守って!、…この先もずっと、……私は、絶対に君を守るから!」
流れ出す涙の旋律と共に、私の心にはクナキくんの優しい顔が映し出された。
「…わかった。…約束する。…リュイは俺が守る、…絶対に約束する…」
クナキくんは真剣な表情で告げると、にっこりと優しい笑顔で私に答えた。
私はその暖かさを授かる様に、クナキくんの唇に優しく口付けをした。
その思いを逃さない様に、深く。
私は長い口付けを終えると、いつもの笑顔でそっと呟いた。
「…クナキくん。…大好きだよ…」
私は身を任せる様に、その暖かい身に体を沈めた。
「…俺もだ。…リュイ」
クナキくんは頷くと、私を強く抱きしめた。
夕暮れの広場に靡く噴水の鼓動が2人を包むように優しく広がっていた。