2012秋祭り アンソロ

▼書込み 

10/27(Sat) 15:26



学園祭×ハロウィン×ちょいエロ注意
N906imyu

10/27(Sat) 15:31
Yme,s


いつかお前が言った。
『揺れた時に至純の光が見えたんだ…』
と。



今年も私立ワイミーズ学園秋の文化祭、最大の風物詩…仮装ミスコンが開催される時期になった。

放課後の教室。
数人を残しざわめきが静寂にすりかわる。
遠くで部活動の生徒が放つ嬌声が響いていた。

つい1時間前にホームルームが終わり、つつがなく自分までミスコンに選出されてしまった、見目麗しい金髪の青年は不機嫌そうな顔をのぞかせている。

天高く流れ流れ、千切れゆく白い雲を見やりその不機嫌そうな青年…メロがつぶやいた。

「チッ…なんで俺まで…てかどうせ今年も優勝は決まったようなモンじゃねぇかよ…マット…オィ聞いてんのかっつう」

言いながら机に突っ伏したメロの視線の先にはゲームに夢中な赤髪の青年。
通称マット。
横顔までも整ったコイツは入学してからコッチ、この手の人気投票系イベントでは上位常連だ。
今流行りの総選挙なんかやろうもんならセンターは確実だろう。
てかコイツのどこにそんな人気者要素が…。
と、メロは明るい色に隠れた瞳を盗み見ながら思う。

音響がイカれた時さりげなく直してくれた…とか。
パソコンがフリーズした時、事もなさげに解決してくれた…とか。
素行の悪い生徒に絡まれたのを飄々とあしらってくれた…とか。
なのに彼女がいなくてフリーだ…とか。

マットの噂の快挙には暇(イトマ)がない。
女子がさりげなくてカッコいいよねとか言いながら廊下をすれ違う光景に何度も出くわした。

―――ホントのコイツを知ったらどう思うだろうか…。
なんて。
陳腐な妄想。
優越感じゃ…決して、ナイ。


「出来レース…」

メロがポツリ、漏らすと小さなゲーム画面から目を逸らすことなく、低い声でマットがつぶやいた。

「ンー?それってヤキモチ?」

ふいの指摘にメロが飛び起きる。

「は?違げぇよバカ!」
「うは、メロ真っ赤だし」
「こっち見てねぇじゃん」
「見なくてもワカル」
「誰がお前なんかに…」
「ハイハイ…けどさぁ」

マットはたしなめるように言うと、改めてメロに向き合った。
ヘーゼルナッツの瞳がメロを射抜く。

「メロのがモテてんだっつの…知らないとは言わせねよ」
「なっ…」

そんな事実関係はナイ。
と思う。

「上級生、下級生に飽き足らず…男まで…」
「冗談はやめろ」
「冗談で済むならイイけどね…てかメロちゃん今回の仮装、なに?」
「…こま…ただ」
「え?なに?」
「…猫又だ、悪りぃか!」
「うは、マジで?…最悪!」
「なんでだよ!」
「メロフリークが増えるカラ」
「は?なに言って…んな訳…」

「あるよ」

マットがゲームを机に置いて距離を縮めてきた。
ハロウィン仮装が恒例となっているミスコンで、猫又なんつぅマニアックチョイスを推してきたのはリンダだった。

「妬けちゃうなァ…俺以外に…見せたくねぇのに…」
「は…?」
「猫耳とか…なんなの…全校生徒萌え殺す気…?」
「殺すつもりは微塵もねぇよバカか!」
「メロにそんな気、なくても…ね」
「ねぇっつの!そういうお前はなんなんだよ」
「俺?俺は…ヴァンパイア…」
「なんだ王道じゃねぇか」
「あは…ね、丁度イイから噛みついても…いー?」
「はぁ!?」
「メロのファンが増える前に…」
「ちょ…待てっ…」

待たない…
そう言ってマットはメロの口唇に甘噛みのキスを落とす。
ふんわり咲いた快楽の花が一瞬にして空気を変えた。

「メロは俺のモンだって…」
「ん…は…」
「知ったらみんな…どう思うかな?」
「ッ…らねぇよ」

誰もいない教室に、互いの口唇から零れ落ちる水音が波紋を描く。

「ね…毎日エッ…チな事してますって…」
「は…」
「俺の下で淫らに鳴いてマスって…」
「やめ…」
「知ったら…」

―――ヤベェ…流される…。

キスをしながら言葉を綴るマットの口唇がもどかしく…切なく、メロは思わず肩を掴み引き剥がしていた。

「お前…な…」
「…このままココでシちゃう?」
「バッ…帰るぞっ!」
「メロちゃんそれって…」
「るせ…」
「あは…相変わらずこーゆ事は冒険しない主義?」
「悪かったな!」

―――だからコイツのこんなトコロが…。
見透かされるのは複雑で…いつまで経っても慣れない。

メロが立ち上がる。
机がガタガタと駄々をこねた。

「悪くないよ」
マットのニヤけ顔が急に気恥ずかしさを連れて来た。

「警戒しなくてもいートコロでゆっくり…ね」
「うっせバカ…」

帰路を辿るメロの後を「ホント猫みたいな、な」なんて言いながら嬉しそうにマットがついて行く。
いつもの教室。
在り、触れた、誰も知らない光景。

教室に残された無機質な椅子だけが二人の体温を知っていた。



ふいにお前が言った。
『戻れないことは覚悟してっから…』


End.
N906imyu

☆の付いている部分は必須項目です。

名前

題名

メッセージ
1,000文字まで

あなたのフォレストID

あなたのパスワード

リンク

削除pass

文字の色




投稿規約をご確認のうえ、同意する

※投稿規約をお読み頂き「同意する」にチェック入れて送信して下さい



[戻る]



©フォレストページ