短文

□ムリョク
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これほど私が無力なんて…知りませんでした。


玄関から覗く空には薄灰色の雲が広がっていた。最近天気がいまいちな日が続いている。しかも肌寒く、雪が降るのではと不安が滲む。


「寒いですね。もしかしたら雪が降るかも知れませんね。」
「うー…寒い!!大兄貴、行くのかよ〜」
「雪降る前に帰って来ればいい話だろうが」
「そうだ。ほら、行くぞ」
「行ってらっしゃい、気を付けて。」
「じゃあ、行ってくる」


そう笑い屋敷を離れた皆さんを見送り、私も家へと入った。

暫くして屋敷の周りが騒がしくなり、戸を叩く音がした。ドンドンとなっている戸に向かい、開けると近所のおばあさんが青い顔して佇んでいた。


「どうしたんですか?そんな青い顔をして」
「近場で戦が起こっておるのだ。ここにも軍が来るかも知れね故…」
「…戦、ですか?」
「何でも、七人隊の討伐をするらしいよ…」


…え?


目の前が真っ白になり、気付けば走り出していた。後ろでおばあさんが何か叫んでいるが無視をした。森へ向かう道を走る。そして静かに落ちる雪を気にせず足を動かした。


伝えなければ、今日の戦は罠ということを…どうか…どうか無事でいて下さい!…そう一心に願いながら溶けた雪が染み込み土を蹴った。


「はぁ…は…」


暫く走っていると前の方から誰かが向かってくるのが見えた。私はとっさに近くにたつ木の影に隠れた。乱れた呼吸を整え、向かってくる"誰か"を見る。話し声が聞こえた。


「七人隊も数には敗けたな!!」


!!!…討伐隊?


心臓がドクンっと脈を強く打つ。嫌なことが頭を過る。…違う。誰か、嘘と言って!!
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