物語

□巡蓮華
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第一話



「ハァ、ハァ…っ!!」
所々ちぎれた栗色の髪。
身に付けている、豪華な着物はボロボロに破れ、素足で走って来た為か、白くて綺麗な足は血が固まっていた。
彼女の名は明智神蓮〈アケチカレン〉
否、明智家を追われた身である。
「妾が何をしたと言うのじゃ…。」
夜闇を映した様な漆黒の瞳。
その瞳には、憎しみや悲しみ…様々な感情が浮かんでいた。
“ガタッ”「っ!!」
兵士の声がして神蓮は息を詰めた。
神蓮は今、明智軍に追われ身を隠しているのだ。
行くあても無く…ただ物陰に隠れているしかない無力な少女…。
神蓮は緊張して固まって座り込んでいた…。


“ザワザワ”
街中がやけに騒がしい。
「うるせぇなぁ…。」
一人の青年が団子を頬張りながら呟く。
「おっさん!何かあったのか?」
青年が問うと団子屋の店主が答える。
「明智軍だょ…。」
「明智軍だと!!」
青年が目を剥き問い返す。
「どうした?」
店主も予想外の反応をされ、問い質す。
「…明智軍が、何故此処に来ている…。しかも人を探しているようじゃないか…。」
青年は瞳の奥に険をにじませ店主に問うた。
「っ知らねぇょ!!」
「…。」
青年は少し考える素振りを見せるとイタズラな笑みを浮かべて言った。
「そっか…変な事言って悪かった…団子、美味しかったぜ。」
青年は言い終えると、明智軍の居る騒ぎの中へ走って行った。
それを見つめていた店主は、我に戻り叫んだ。
「兄ちゃん、危ねぇよ!!明智軍に逆らっちゃなんねぇ!!」
青年に店主の声は届かず、店主は顔を真っ青にして立ち止まっていた。
「神蓮姫…。」
青年は走りながら呟いた…。

《続く》
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