物語

□巡蓮華
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第二話


「この娘を見なかったか?」
「いいえ…。」
明智の兵士達が神蓮を殺すため、町人に聞き回っている。
神蓮はいつ見つかってしまうのか…気が気ではない。
神蓮は…民家と民家の隙間に息を潜めていた。
「おぉいっ!!明智の兵士さんよぅ!!」
若い男の声がした。
神蓮は陰から少しだけ顔を出し、見つからない様に男と兵士の会話を聞いた。
「俺、さっき橋の向こう側で見掛けたぜ♪団子屋の方へ走って行った。…何かあったのかい?」
「礼を言う、かたじけない…しかし貴様に教える権利は、私には無い。失礼する。」
兵士は言い終えると、先陣をきって、橋の向こう側へと姿を消した。
兵士達の気配が完全に消えたのを察した男は、神蓮の隠れる方へ“笑顔”で近付いてきた。
「っ!!」
神蓮は男の目線が、自分の元に注がれている事に気付き息を詰める。
(見つかった!)
男は神蓮の居る民家の隙間に辿り着くと、神蓮の頭を撫でた。
「へっ?」
突然、男に頭を撫でられた神蓮は、驚き過ぎて間抜けな声を出した。
「…♪」
男は神蓮のそんな反応を十分味わったところで、目に険を宿すと話を始めた。
「俺は紅蓮〈グレン〉誰の命令とかは言えねぇけど、これだけは言える…神蓮!俺がお前を命に代えても守ってやる。だから安心しろ。」
紅蓮は自分が話をしている中、警戒を解かない神蓮に苦笑を浮かべると、言った。
「お前の正体位知っている。身分差も弁えているさ。でも、今はそんな事言ってられねぇ。わかってくれ明智家の長女、明智神蓮姫…。」
紅蓮が言い終えると同時に、神蓮は紅蓮にすがり付いて涙を流した。
「独りで良く頑張った…でも、もぅ独りじゃないから大丈夫だ。」
紅蓮は、無理な長旅で傷付き、震えあがっている神蓮の身体を力強く抱き締めた。
その後、神蓮は緊張の糸が切れた様で、操り線が切れたに人形の様に動かなくなった。

《続く》
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