物語

□巡蓮華
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第三話



「…。」
神蓮が目を覚ましたのは、ある部屋の中。
「起きたのか?」
襖の向こう側から、昨日の男の声がした。
「ぐ…れん…。」
神蓮は男の名を呟いた。
昨日、自分を助けた恩人…。
神蓮は御礼を言っていない事に気付き、紅蓮の名を呼んだ。
「ぐっ…紅蓮とやら。」
神蓮が呼ぶと、紅蓮が苦笑しながら部屋に入ってくる。
「顔がひきつってるぜ。心配すんなって、俺はお前の味方だ。」
紅蓮がそう言うと、神蓮は顔を覆いながら、口を開いた。
「…礼を言う…有り難う。感謝する…。」
神蓮は、紅蓮に御礼を言うと、黙り込んでしまった…。
「起きたのですね!」
知らない人の声がした。
神蓮の肩が“ビクッ”と跳ねあがる。
「神蓮。敵じゃ無いから心配すんなって♪」
怖がる神蓮を、紅蓮がたしなめる。
紅蓮の言葉を聞いた神蓮は、少し迷った素振りをみせ、紅蓮に中に入る許可を出した。
「入って良いとよ♪」
紅蓮が声をかけると、変わった着物を着た少女が入って来た。


黒の着物は肩が露出され、腕には黒色の袖を着けている。
腰には刀が挿してあった…。
この乱戦の世は、男が刀をもつ時代。
神蓮は奏を見詰めた。


「私、奏と申す者です。えっと、一応…忍の者です。」
「し…のび…。」
奏の自己紹介を聞いた神蓮は、驚いて目を見張った。
「はいっ!忍です。」
奏が笑顔で言葉を返す。
そんな二人のやり取りを見ていた紅蓮は、思い出したように口を開いた。
「お〜ぃ、奏…千鈴の姫さん、呼ばなくて良いのか?」
「あ…。」
先程まで笑顔だった奏の顔が、どんどん青くなっていく。
「呼んできまぁす!!」
奏は叫ぶと、慌ただしく部屋を出ていった。
「…。」
「…ハァ。」
奏が部屋を出ていった後、神蓮は唖然とし、紅蓮は呆れて溜め息をついていた。


「千鈴様ぁぁ!!」
奏が叫びながら走って来るのを見た千鈴は、溜め息混じりで璃音に命令した。
「申し訳ないんでありんすが、彼女を静かにしていただきたいのでござんす…。」
「申し訳ございません…姫。私が責任を持って、叱ります故。また…蓮乃様には、きちんと報告しておきますので、どうか御許しください…。」
璃音はそう言うと、奏の元に即座に移動すると、拳骨を一発くらわせた。

《続く》
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