桃太郎誕生秘話

□桃太郎誕生秘話
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与平は、その日も3人を殺した。
そして金目のものを奪って逃げた。村人はそれを知って与平を追ったが、どうにか逃げ延びた。

しかし、与平は右肩に大きな傷を負った。
「ちくしょう、あの野郎ども。百姓のくせに落ち武者の弓を持ってやがる。」。
与平は、河原に転げ落ち、そのまま肩を冷やした。
 目を瞑りながら冷たい川の水がずきずきする肩の痛みを麻痺させていくのを楽しんだ。

 しばらくして、起き上がり、川を渡って歩き始めた。歩きながら自分の生い立ちを振り返った。

生まれて物心ついた時には盗賊だった。だれが母でだれが父かは知らない。物を盗むことと人を殺すことだけ教えられた。いつも盗んでは逃げ、盗んでは人を殺し、どこにも落ち着くことはなかった。いつしか盗賊仲間も去り、ひとりだけとなった。時には仲間ができたが、決して信用などしなかった。
おれのやり方についていけない奴は勝手に去るがいい。
勝手に死ぬがいい。
おれはひとりで行き着くところまで生き抜いてやる。 与平はそう考えながら一晩中歩き続けた。明け方、ある山里に着いた。

一軒の農家を見つけた与平は、こっそり近づくと、その庭先に桃の木を見つけた。
口の中に唾がたまるのを感じ、一晩中飲まず喰わずでいる自分に気づいた。
すぐさま、大きな桃をもいで食った。
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