短編

□変わらぬ世界
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「ねぇ、政宗」

「Ah?」

「もし、私が死んだら、この世界は何か変わるかな?」

いきなり、青花が俺に質問を投げかけてきた。

その質問の内容に、俺は顔をしかめる。
「何でそんなこと思うんだ?」

「・・・何となく」

彼女の返答に、俺はため息をついた。

「アンタ一人が死んだくらいじゃ、このworldは変わらねぇだろうな。」

この世界は広い。人が一人や二人死んでも、何も変わらないだろう。

「そうだよね…」

青花は悲しそうな顔をした。

「・・・だが、俺のworldは変わるだろうな。」

「え?」

青花が首をかしげる。

「アンタが死んだら、きっと俺の世界は灰色になる。何故か分かるか?」

青花は、目をぱちくりさせた状態で首を振った。

「今、アンタは生きて、この世界にいる。俺の目の前にいる。それだけで、俺の世界は虹色だ。」

「何で?」

青花は不思議そうに俺に訊ねてきた。

(こいつ…無自覚にも程があるぞ…)

俺は少し、呆れた顔をしながら言った。

「俺はな、アンタが好きなんだよ」

しばらくの間、沈黙が続いた。

しかし、先に沈黙を破ったのは、青花だった。

「政宗…それ、本当?」

「アンタ…今まで気づかなかったのか?」

青花は首を大きく縦に振った。
その反応を見、俺はさらに呆れた顔をする。

(今までの俺の苦労は一体…)

「あのー…政宗?」

青花が俺を呼んだ。
「何だ?」

見るとそこには…顔を真っ赤に染めた青花がいた。

「それ…本当に本当なんだよね?」

「こんな嘘、誰がつくんだよ。」

俺が言うと、青花はふわりと笑った。
「良かった。」

「…やっと笑ったな。」

彼女の微笑みにつられ、俺も笑った。

「あのね、政宗」

不意に名前を呼ばれた。

「私も好きだよ」

その言葉が嬉しくて、俺は青花を抱き締めた。


END...
 

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