ポケモン本棚

□大人な僕と
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エレベーターは最上階で止まった。

高級マンションの最上階だってさ、もう冷や汗が止まらないねこん畜生。

「ついたよ。
どーぞ、ここ僕の家。」

「おじゃまします・・・あれ?」

玄関はすっきりと片付いていて、白を基調にまとめてある。

リビングにもぬいぐるみなんかは一切なくて、全体的にシャープでスマートな印象を与えた。

飾られているサックスが、大人っぽさを更に際立たせている。

「どう?
ぬいぐるみなんかないでしょ?」

「ないですね・・・意外。
レ〇ブロックとかあると思ったのに。」

「僕大人。子供じゃない。
あ、そこのソファー座ってて。」

クダリさんは慣れた手つきで電気ケトルでお湯を沸かす。

へぇ・・・意外と生活感あるんだ。

とあるお客さんが「ロボットみたい」と言ってたのを思い出し、クダリさんが人間であることを再確認する。

「ノボリは隣の部屋なんだ。
今は夜勤中だけど。」

「あ、そうでしたね。
今日の当番はノボリさんだったっけ。」

「うん。
ノボリの部屋は黒いんだ。
僕の部屋よりもっと殺風景。」

想像して、なるほどなぁと思う。

無駄なものは置かない。

ノボリさんらしい。

私にココアを手渡すと、クダリさんも私の横に座った。

「クダリさんも案外大人なんですね。」

ココアの丁度いい甘さが口に広がる。

「そう、僕大人。
大人に見えるようになった?」

確かに、今回のご自宅訪問で、イメージは大分変わった。

でも・・・何か、腑に落ちないというか。

「どうでしょう。
クダリさんに大人っぽいのは似合わない気もしますけど。」

すると、どうしたのだろう。

クダリさんはしょんぼりと俯いてしまった。

あれ、そんなに傷つけた?

「す、すみません、ちょっと言い過ぎましたね。
上司に対して口が過ぎました。」

「・・・愛梨はさ。」

僕のこと、どう思う?

いきなりの質問に頭が戸惑う。

「どうって・・・上司ですよ。
少々子供っぽい上司。」

「僕、子供っぽい?」

「・・・人に比べれば。」

嘘はつけない。

「・・・そっか。」

その時だった。

視界がくるりと回り、目の前の机とココアのマグが消えた。

変わりに見えるのは、白い天井とクダリさん。

「僕、子供じゃない。
大人なんだよ。
こういうこともする、大人の男。」

待て待て、どうなってるんだ。

ここはソファーの上で、私は今、

クダリさんに押し倒されている・・・?

理解した瞬間、体中に血が駆け巡った。

顔に熱がどんどん集まっていく。

ちゅ、と首筋を吸われ、自分でも聞いたことのないような声が上がった。

「愛梨、可愛い。」

クダリさんは首筋だけでなく、色々なところにキスマークをつけていく。

それと並行して私の服も肌蹴させられ、何だかスースーした。

「く、クダリさんっ、やめ、うぁっ」

「止めないよ。
愛梨だって、それなりに覚悟はしてきてるでしょ?」

「、かく、ご?」

「一人暮らしの男が家に女の人を呼ぶのは、そういうこと。」

「・・・へぇ・・・そうなんですか。
初めて知りました・・・。」

「え。」

クダリさんの顔がバッと上がる。

知らなかったの、という驚きの視線。

まさかこの世の中に、そんな暗黙のルールが存在していたとは。

やっぱりもう少し男友達作っとくべきだった。

そう後悔をしていると。

「・・・っく、ははっ、あっはははははは!!!!」

クダリさんが笑い出した。

「な、何なんですかクダリさん!?」

「だって愛梨、今まで知らなかったなんて、ぶはっ!!」

愛梨と付き合った人は災難だね、あはははは。

あれこれ笑われてんのか?私笑われてるのか?

こんな半裸の状態で?

ますますよく分からないが、何だかクダリさんの爆笑を聞いてるうちに私までおかしくなって・・・
思わず軽く吹き出してしまった。

半裸の女を男が押し倒して、2人とも大爆笑中。

はたから見れば変な光景に違いないのだが、その時だけは、あまり気にならなかった。






クダリさんは一しきり笑った後、今度はどこか勝ち誇ったように言った。

「ふふっ・・・知識の面では、僕の方が大人みたい。」

「・・・否定できませんね。」

「子供の愛梨ちゃん♪」

「・・・なんですかクダリさん。」

言いたいことはあるがまぁ耐えよう。

今反論しては、本当に子供になってしまう。

すると、いきなりクダリさんが顔を近づけてきて、

・・・ちゅ。

「うぎゃぁ!何するんですか!!」

「僕の大好きな子供の愛梨ちゃんにちゅー。」

「な、んな、っ」

数回バードキスが繰り返され、それは徐々に深いものになっていった。

逃げる私を追うようにクダリさんの舌が絡み、意識も恥も、心でさえも溶かしていく。

とろんと虚ろな目をする私を見つめ、クダリさんは上機嫌に言った。

「僕、愛梨のこと好き。
だから、大人の僕と、大人のすることしよう?」

その表情と、肌蹴たシャツから見える肌には、子供には出せない色っぽさがあって。

やっぱり男の人なんだなぁ、と、溶けゆく意識の中で思った。











大人な僕と
(私で遊ぶ気ですか?)
(本当の大人は遊んだりしない。本気だよ。)
(・・・子供の私は初めてなんです。優しくしてくださいね。)
(勿論!愛梨大好き!!)
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