ポケモン本棚

□ハッピーマリアージュ
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「たのもーーっっ!!」

勢いよく開いた扉。

本日の挑戦者は、予想外の人物でした。

「愛梨!!」

「えへへ、こんにちはノボリさん。」

「ー体どうしたのです?こんな所まで・・・。」

「ノボリさんに会いに来ました。」

にひひ、と笑うこの少女は、今現在お付き合いをしている愛梨。

普段愛梨は、私に一声かけてから私の元を訪ねるのですが。

そんな彼女のいきなりの訪問に、無意識のうちに心が踊りました。

・・・だが、なぜ彼女はわざわざバトルをして会いにきてくれたのでしょう。

控室などに直接来ていただければいいとあれほど申しましたのに。

「理由がないと来ちゃダメなんですか?」

ムッとする愛梨。

「そうではないのですが・・・。」

慌ててした弁解も空しく、彼女は頬を膨らませたまま拗ねたように言いました。

その顔でさえ可愛いと思ってしまう私は、どこまで重症なのでしょう。

「・・・いいですよ別に。
 最近残業が大変そうな皆さんにちょっとしたカップケーキ焼いて、持ってきたもののノボリさんいなくって、
 探してたら人ごみに流されてシングルトレインの中に押し込まれただけです。
 久々にバトルやったら案外勝ち進んじゃって、ここまで来ちゃったっていうだけで。
 大した理由じゃないんで。えぇ、本当に。」

どこか棘を感じます。

ですが、紙袋から差し出されたカップケーキは、成るほど・・・確かに美味しそうでした。

「じゃ、あたしはこれで。」

そう言って目も合わせずに振り向き、入ってきた扉に手をかける愛梨。

「どこに行くのですか。」

「1両目。」

「お客様、逆走はお止めくださいまし。」

思わず口から零したいつもの言葉。

あ、と思えば、時すでに遅し。

「・・・あぁあー、そうですか。
 そうですよね、あたしはただのお客さんでしかないですよねー。」

彼女の周りに見えるあのどす黒いオーラは、気のせいではないのでしょう。

「そ、それは、仕事上の癖と言いますか、その、」

「ノボリさんの仕事オタク!!」

「オタッ!!?」

大ッッッ嫌いッ!!

叫びに近い声を残して走り去る愛梨の背中を、私はただ茫然と見つめることしかできませんでした。
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