ポケモン本棚

□非日常選択肢
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クリスマス?もう過ぎた。

年明け?もう少し先。

何が言いたいのかと言えば、要するに今日は「普通な日」なのである。

何か行事をする訳でもなく。

大きな仕事を任された訳でもなく。

この普通・平凡・シンプルイズザベストな今日、私はいつも通りの仕事をする。

はずだった・・・のだが。






事件は朝。

シングルトレインの運転手である私は、それこそいつも通りに黒ボスと打ち合わせをしていた。

その時に、何とも明るい挨拶と強すぎるタックルで飛び込んできたのが・・・

白ボス。

「愛梨、おっはよーーーっっ!!!」

「うぐぇっ」

「おや、遅刻はしなかったようですね。」

「ノボリ置いてっちゃうんだもん!
ひどいよね!?」

いやいや、上半身がっちり固められた状態のあたしに振らないでくれ。

う、ぐっ・・・くそ、痛いぞっ・・・。

「と、とりあえず離していただけますか白ボスッ・・・。」

「あはっどーしようかな。」

ますます強く抱かれるところを見ると、今日は少々長引きそうだ。

引きはがそうと奮闘していると、前から黒ボスのため息。

「・・・クダリ、愛梨が嫌がっています。
もうそろそろお止めなさい。」

「本当に?
嫌なのは愛梨じゃなくてノボリなんじゃないの?」

にやっと笑う白ボス。

僅かに目を見開いた(ような気がする)黒ボス。

意味が分からない。

白ボスは更に告げる。

「ねぇ愛梨、今日ダブルの運転手やってよ。」

「はい?
・・・そんなことできる訳ないでしょう。」

何を言い出すんだこのボスは。

今現在、シングルトレインの運転手は私、ダブルトレインの運転手は私よりも圧倒的に可愛くて美人な後輩がやっている。

「別にダブルに行くのは構いませんが、一応役職ですからね。」

「そうですよクダリ。
仕事上決まっている事を、あなたの私的な理由で変えてはなりません。」

「どうせ座ってるだけじゃん。」

「あ、今さらっと私の仕事侮辱しましたね。」

「してない。」

むにむにと私の頬をつつく。

「大体ノボリ、さっきから仕事だからっていう割にやけに頑固。
『愛梨を離したくない』って聞こえるけど?」

正面を向けば、黒ボスの顔は曇っていく一方で。

あぁやばい、有り得ない冗談言われて超怒ってる・・・このままじゃ確実にとばっちりくらって減給だ。

年末年始をわびしく過ごしたくはない。

「だ、ダブルの運転手は私よりも数百倍可愛くて美人じゃないですか。
白ボスのことかっこいいって言ってましたよ?
あー羨ましい羨ましい。ねぇ黒ボス?」

そう!

私がダブルに行ったところで、何の得も生じない。

しいて言うなら、シングルに可愛い運転手が来て黒ボスが喜ぶくらいだ。

気付け白ボス!

そしてこの手を離し、普段の仕事をしようじゃないか!!

「いえ、私は愛梨の方がいいです。」

「あの子ヤダ。裏の顔怖い。
僕も愛梨がいい。」

・・・何言ってんですかぁあぁあっ!!!

あーあれですか、まさかの展開ってやつですかそうですか。

ちゃっかり黒ボスまで血迷ったご回答してくださり光栄です、はい。

「とにかくノボリ!
今日は僕が愛梨を貰うから!!」

「いけません。
私は愛梨の運転でないと安心してバトルができないのでございます!!」

「だったら正々堂々勝負するしかない!
僕が勝ったら、今日愛梨貰うから!!」

「いいでしょう受けて立ちます!
ご覚悟なさいまし!!」



・・・あぁ、もう。

転職したろうか。












非日常選択権
(私には選べないんですよね、分かってます。)

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