ポケモン本棚

□訳アリ人の嘘
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「いったっっ!!
クダリさん何で殴るんですか朝一で!!」

「だって昨日、愛梨が僕に跳び蹴りした!!
仕返し!」

「それはクダリさんが私に足ひっかけて転ばせたからでしょう!?」

「愛梨が僕のサンドウィッチにマスタードかけるのが悪いんだよ!」

「あったりまえです!
マスタードなしのサンドウィッチなんて有り得ない!!
クダリさんこそ、私のコーヒーに砂糖いれるの止めてもらえません!?」

「ブラック苦いよ!砂糖いる、絶対!」

「だぁあぁっ!!こうなったら勝負です!
ほわちゃーっ!!」

「あははっ当たってないよー」

きーん。

わー。

ぎゃー。

うぎゃぁぁぁー。

あまりにバカらしくて、聞く気にもならない罵倒。

既に日常茶飯事となった、サブウェイマスタークダリとダブルトレイン運転手愛梨の喧嘩の隣で、ノボリとカズマサは日程を確認する。

最初は止めていたけども、最近は面倒なので放置である。

誰もかかわりはしない・・・いつも通りの仕事をこなす。

理由はただひとつ。

止める意味がないからだ。

勝負といってもポケモンバトルではないので損傷も出ない。
(基本的に愛梨がクダリに殴りかかってクダリがあっさりと避けることの繰り返しである)

クダリがあまりにも華麗に避けて、愛梨があまりにも完璧に弄ばれるものだから、怪我もない。

つまり、勝手にやっといてくれ、ということなのだ。

そんなクダリと愛梨は、いつしか「世界を代表する犬猿の仲」「喧嘩するほど仲がいいの実写」と呼ばれ、

(仲はいいがそれ以上になることはないだろう・・・つまんねーなおぃ。)

誰もがそう思っていた。






腕時計の長針が11を指す。

6時55分。

後5分で、トレインを動かす時間だ。

「クダリ、愛梨。時間です。」

「あ。はーい。」

「くっそ・・・また当たらなかった・・・。」

「センスないんじゃない。」

「クダリさんが避けるのがいけないんです!」

さっさと切り上げて歩くクダリと愛梨も、慣れたものだ。

仕事に支障はきたさない。

それが暗黙のルール。

隣を笑顔で通り過ぎたクダリに、ノボリはちらっと目配せをし、ため息をついた。

(いつまで続ける気でしょうか・・・。)

喧嘩も、嘘も。

いつまでもこのままではいられないことは、2人が一番分かっているだろうに。

全く・・・裏側の世界なんて知るもんじゃない。

唯一全てを知るノボリは、そんなことを思う。
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