ポケモン本棚

□1日後のアニバーサリー
1ページ/2ページ


かりかりかりかり。

ペンが滑らかにすべっていく音がする。

時刻は0時。

凄く眠たくて帰りたいが、ここは我慢だ。

目の前では椅子に座った我が恋人兼上司のノボリさんが、さっきから激闘を繰り広げている。

相手は山積みの書類。

クダリさんのが半分・・・と言いたいところだが、今日はダブルトレインの点検があるらしく、
バトルができないクダリさんは文句を言いながらも椅子に縛り付けられ、夕方までにやりきってしまっていた。

そのせいでシングルトレインはフル活動で、さすがのノボリさんの目にも疲れが垣間見える。

きっとあの山積み書類の中には、ダブルトレイン点検の報告書なども混ざっているんだろうな。

そんなことを思いつつ、ソファに座ってノボリさんの背中を見つめる。

そっとコーヒーを淹れたりはした。

でも邪魔しては悪いという思いから、話しかけたりはしない。

可愛い子ならここで「構って」などと言って甘えられるのだろうが、生憎そんな技は心得ておらず。

その結果、必然的に交わす言葉もなければ、やることもない。

さすがにずっと座りっぱなしなので疲れてきた。

それに飽きてきたし・・・何より眠気が襲ってくる。

本当は私が残る理由もないのだが、ノボリさんが頑張っているのにおいて帰るなんてできない。

ノボリさんの仕事が終わったと同時に、笑顔で「お疲れ様です」という事。

それが私のできること、そう、ゲーム風に言うならミッションというものなのである。
(こんなテンションじゃないと耐えきれませんマジで)

ミッション成功のためには、起きていることが必須だ。

瞼が重く、気を抜くと下がってくる。

眠い、眠いが耐えろ、耐えるのだ。

それに、今日は・・・

ノボリさんと一緒にいたい理由がある。

あぁもう何でわざわざ今日なんだろう・・・

こんなに忙しくて走り回って夜遅くまでデスクワークして・・・

こんなの、

覚えてるわけ、ない、よね・・・。

ノボリさんの背中がぼやけていく。

寝ちゃ駄目なのに。

ノボリさん頑張ってるのに。

まだ、

ノボリさんに教えられていないのに・・・。

何かに吸い込まれるように、私の意識は途絶えた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ