ぬらりひょんの孫 本棚

□赤い糸
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「・・・。」

どうも寝てしまっていたようだ。

ゆっくりと目を開くと、見えるのはいつもの高い景色。

牛頭丸は小さく欠伸をした。

ズバリ言う。

本家は暇だ。

特にやる事も無いからこんなに眠くもなるのだ。

おかげで体が鈍って仕方ない。

起きてもやはりやる事は無く馬頭丸もいなかったため、もう一度眠りにでも入ろうか。

そう考えた時、見慣れないものが目に入った。

赤い糸。

「何だありゃ・・・。」

眉を寄せる。

目で追えば、それは建物の角を曲がって続いているらしい。

行って何かがある訳でもなかろうが、暇つぶしにその出所を調べてみる事にした。

木から飛び降り、赤い糸を辿って行く。

糸は建物を一周して中に入り、思ったよりも長く続いていた。

そしてついに、出所を発見。

柱の所で糸が浮き上がっていた。

それはつまり、何かによって糸が持ち上げられていると言う事。

特に期待などはせずに柱を曲がる。

すると。

そこにあったのは、見慣れた後姿。

雪女だった。

何やら鼻歌を歌っている。

そして糸は、雪女の所で途切れていた。

一体どういう事なのか。

どうだって良かったが、ここまで来て終わるのはスッキリしないため、仕方なく声をかける。

「雪んこ。」

鼻歌が止む。

雪女はこっちを向いて、唖然とした。

「な、なな、ななな・・・。」

「はぁ?」

「な、何で此処にいんのよ・・・。」

手に持つ赤い糸の切れ端が震えている。

「お前が持ってる糸が落ちてたんだよ。追ってみたらお前がいた。それだけだ。」

確かな事実だ。

だがそれを聞くと、雪女の顔は真っ赤になった。

少し涙目になり、顔の角度が下がっていく。

「ど、どういう事よ・・・。」

「だから追ってきただけっつってんだろーが。」

「違う!」

きっと睨まれる。

そしてブツブツと何かを言い出した。

「そ、そうよ・・・。こんなのはただの占いで、非科学的だし・・・証拠は無いし・・・。信じる事はないわよつらら。しっかりしなさい・・・。」

そしてピタッと震えが止まる。

息を思いっきり吸い込み・・・。

「きゃぁぁぁあぁあぁぁぁぁ〜〜〜〜ッッッッ!!!!」

耳を劈く叫び声。

慌てて耳を塞ぐのと同時に、雪女が物凄い速さで隣を駆け抜けて行った。

残されたのは、糸と一冊の本。

「ったく、何なんだ・・・。」

本を拾って見てみる。

「運命の赤い糸

赤い糸を好きな長さだけ用意して、好きな所に置いておく。もう一方の端は自分が持っておいて下さい。

糸を持ってから最初に声をかけてきた人が、貴方の本当の好きな人です。」

「・・・。」

思わず固まってしまった。

何だこれは。

くだらないにも程があるだろう。

「あいつ、こんなんやってたのか・・・。」

しかもこれじゃ、俺にに好意があると言っているようなものだ。

有り得ないだろう。

占いなんて、くだらない。

当たるという根拠は何処にもない。

ただ。

牛頭丸は、軽く微笑を浮かべた。

「信じてみんのも悪くねぇな。」

外れればやっぱりと笑うだけ。

当たっていれば・・・。

それも、違った笑みを浮かべるだけ。

「ま、俺にそんな気は無いから報われないんだがな。」

本を同じ場所に戻し、木へと戻る。

ページの下に書かれていた言葉に、牛頭丸は気付いていない。

「又、もし声を掛けた理由が赤い糸と関係があったら、相手も本当は貴方の事が好きなのです。」





赤い糸
(運命の相手はすぐそばに。)

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