ぬらりひょんの孫 本棚

□大切な貴方へ。
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何やら、騒がしい。

人参を切っていた手を止める。

一体何事か。

そう思った直後、扉が思いっきり開かれた。

「大変だ!牛頭馬頭が!」

「!?」

・・・え?

あの二人に、何かあったのか。

表に出て走って行ってみると、そこには切り刻まれ、今にも倒れてしまいそうな牛頭丸がいた。

馬頭丸はぐたりとし、意識が無い様だ。

「ッ!!」

ショックを受けた。

牛頭丸が、

あの牛頭丸が、

死んじゃう・・・。

よく考えれば死ぬことは無かったのだが、何故か雪女の頭はそう考え出した。

途端、胸に広がる恐怖と不安。

心臓が荒く脈打ち、周りの温度が下がった気分だ。

冷や汗が垂れる。

本当に、大丈夫なのかしら。

あのままじゃ、死んじゃうんじゃ・・・?


そして次に気がついた時は、牛頭丸の腕の中だった。

あの後、体が勝手に動き出していたのだ。

群集を掻き分け、牛頭丸に抱きついた。

「うぁ、てめぇ、何しやがるっ!!」

周りが見てる。

牛頭丸が小さく暴れる。

明日になれば、噂にでもなるのは間違いない。

きっと後悔をするのだろう。

でも。

「・・・ッ・・・。」

涙が溢れた。

怖かった。

物凄く怖かった。

恥ずかしさを忘れる位。

貴方が、

いなくなっちゃいそうで。

牛頭丸の動きが止まった。

辺りは静まり、聞こえるのは雪女の小さいしゃくり上げだけ。

涙を止めようとは思わなかった。

止めた後に来る恐怖が怖くて。

すると、ふわりと腰に腕が回った。

優しく抱きしめられる。

牛頭丸は荒い息をつきながらも片手を上げ、雪女の涙を親指で拭った。

「・・・悪かったな。」

その瞬間、恐怖が消えた。

牛頭丸は生きててくれた。

もう、大丈夫。

そう感じた。

最後の涙を一粒流し、牛頭丸に微笑んだ。

「もう無茶はしないでね。」

いっつもからかってきて、

生意気で、

むかつく。

だけど私はもう

貴方がいないと

生きていけないの。

だからお願い。

私を独りにしないでね。






大切な貴方へ。
(「独りにした瞬間に氷漬けにしてやるから。」)
(「・・・受けて立つ。」)

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