ぬらりひょんの孫 本棚

□雪の掟
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昔、母に言われた。

「雪女は雪だから、決して熱い物には触れられないのよ。」

そう。

私は雪女。

人を凍らせる妖怪。

決して、

熱い物に触れてはいけない。



私が視界に入ると、ここぞとばかりにからかってくるアイツ。

毎日の口論。

野次の飛ばし合い。

でもそれらは全て、中から私を焦がしていく。

例え言い合いだったとしても。

あなたと話している時、私がどれだけ頑張ってるか知らないでしょ。

少し涙目になってみれば、慌てて動揺し出して。

じゃあ言わなきゃいいのよ。

思うけど、そうすればこの小さな幸せの時間はなくなってしまうから、口には出さない。

上手にタイミングを測って別れた後は、いつも心に穴が開いたよう。

そこを通って行く冷たい風を感じながら、いつも思ってしまう。

私はなんて馬鹿なのだろう。

だってそうでしょう?

雪女が恋をする。

それは、許されない事。

何故か。

思うが故に、恋する相手を殺しかねないから。

気付いた時、あなたの骸を見るなんて絶えられない。

私にはどうもできない。

だから、私は恋なんてしちゃいけない。

分かってるのに・・・。

胸の前で拳を握る。

だが、すっと力が抜け、解け落ちた。

それに、自分を殺しかねない相手なんて、冗談じゃないわよね。

口元に悲しい笑みが浮かぶ。

そして行き着く答えは、もし私が雪女じゃなかったら。

もし違う妖怪だったら。

あなたは私を好きになってくれる?

頭に浮かぶ母の声。

「雪女は雪だから、決して熱い物には触れられないのよ。」

・・・ねぇ。

私が雪女じゃなかったら、

あなたへのこの熱いキモチに触れられるの?

答えはいつになっても見つからない。

私は

どうすればいいの?





雪の掟
(苦しくて、動けない。・・・早く助けに来てよ。)

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