駄文

□フーキーズ 自己紹介
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「あ、へーちゃーん!
 ちょっとこのマイクに向かって自己紹介してくんない?」

放課後の風紀委員室に入って平八郎が聞いた第一声が、この何とも楽しそうな蓮の言葉だった。
部屋には蓮の他に姿はなく、蓮は部屋中央に置かれた大きな机の傍にある椅子に悠然と座っていた。
その手には録音も出来るのだろう、ポータブルプレイヤーが握られていた。
マイク部分だろうを指差し、こちらに突き出すように向けられている。
爽やかなまでににこにことした蓮の笑顔に、平八郎は何か怪しげなものを感じとる。
「じ、自己紹介って・・・何でだよ?」
その、あまりの怪しさに平八郎は思わず後ずさってしまう。
そんなことは気にもかけずに、蓮は戸口に立っている平八郎に近寄り、腕をつかんで自分が先程まで座っていた椅子に座らせる。
「なーんでもいいんだよ!初めまして〜成田平八郎で〜すとか適当に言ってくれればいいから!」
「いや、だから何で・・・!」
「はい、スイッチいれるよー!」
平八郎の抗議も聞かず、蓮は録音のスイッチを押す。
「人の話聞けって!おい、蓮!」
「ほら、もう録音始まってるよ?自己紹介自己紹介!」
「え?!あ、え?!」
平八郎は抗議を続けるが、蓮はほらほらとポータブルプレイヤーを口元に突きつけてくる。
これは何を言っても蓮は言う事を聞かないだろうと諦めて、平八郎は一つ溜め息をつく。
「えー・・・と、初めまして?成田平八郎です・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・へーちゃん、何か喋んないと・・・」
何を言っていいものかと沈黙する平八郎に、蓮が言葉を促す。
「っていうか、いきなり自己紹介しろとか言われてもだな!
 ・・・あ!もしかしてこれ、お前の怪しいサイトに載せようとか考えてるんじゃ・・・!」
「はーい!!実はとっても心優しい成田平八郎君でした〜!!」
言って、蓮はすかさず録音を止める。
「今すぐ、それを消せ蓮!!でなきゃ寄越せ!消去してやる!!寄越せーー!!!」
「せっかく録ったのに消すなんて出来るわけないでしょ?!」
取っ組み合って、ポータブルプレイヤーを奪おうとする平八郎と奪われまいとする蓮。
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