駄文

□フーキーズ カラオケ
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「クラスの奴にカラオケの割引券貰ったんだけど、今日皆でいかない?」
風紀委員の仕事を終え、おやつも食べ終わり、あとは帰るだけという時になって、蓮はその手に紙切れを持ち、ひらひらと振って見せながら、そう言った。
その手にある紙切れがクラスメイトに貰ったという割引券なのだろう。
「カラオケって庶民の娯楽施設ですよね?!僕、行ってみたいです!!」
蓮の言葉に乗ってきたのは晴彦だった。
「僕、前々から興味あったんですよねー!楽しみです!」
「じゃあ、ハルちゃんは決まりだねっ二人はどうする?」
笑顔で晴彦に答えてから、蓮は和馬と平八郎に問いかけた。
「俺は遠慮しとくわ。特に歌いたいって気分でもないし」
「えー!行こうよへーちゃーん!俺、結構歌上手いよ?」
気乗りしないと返事をする平八郎に蓮はそう言って、平八郎の隣へ行き手を肩に回す。
「別にお前の歌のレベルなんぞ聞いてねぇよ」
「あまりにイイ声で腰が砕けちゃうよ?」
「いらんわ!何で俺がお前の声で腰砕けにならなきゃなんねぇんだよ!」
耳元に蓮の自信たっぷりのイイ声でそう言われたが、平八郎は肩に回された手を乱暴に払い、そう言い捨てた。
「俺のヒーローソングリサイタル聞いてよー!」
「本音はそれか・・・」
先程のイイ声とは裏腹に、幼い子供が駄々をこねるように蓮は言い放つ。
その言い草に呆れる平八郎だったが、基本的にお人好しで付き合いの良い平八郎は蓮の申し出をしぶしぶ引き受けてやった。
「カズ君も行きますよね?」
平八郎が了承したところで、晴彦が和馬にそう問いかけた。
「そんな金なんてあるかよ!そもそも何で俺がお前らと一緒にカラオケなんか行かなきゃならねぇんだよ!」
「いいじゃないですか、きっと楽しいですよー?」
「仕事が終わった後にまでお前らと顔を付き合わせてやる必要はねぇ!!」
「・・・この僕が誘ってるんですよ?カズ君・・・」
首を小さく傾げながら和馬を誘う晴彦であったが、和馬のその言い草にブラックモードが発動した。
「ぼ、ボンボン・・・?」
「僕が折角、こうやって誘っているのにその言い草はないと思いませんか?カズ君?
楽しく親睦を深めようとしている、この僕に」
晴彦の黒いオーラが部屋に立ち込める。
蓮も平八郎も晴彦の出すオーラが怖くて言葉も挟めず、また動く事も出来ない。
その黒いオーラが一身に向けられている和馬は冷や汗を流しながら、そ、そうですね・・・、と喉を引きつらせながら精一杯そう答えた。
「カズ君の分のお金くらい、僕が出してあげますから、一緒に行きましょう?ね?」
その晴彦の一言で、和馬の心境は一変した。
「え?!ボンボン金出してくれんの?!マジで?!」
「そのくらい構いませんよぅ」
「なぁんだ!そうならそうって早く言ってくれよ!!飯とかも注文していい?!」
「カラオケでご飯も食べられるんですか?!もちろん構いませんよ!どんなのか気になります!」
「よし!じゃあ決まりだな!早く行こうぜー!」
あんなにも嫌がっていた和馬だったが、奢りと聞いて態度を豹変させた。
晴彦と肩まで組んでいる。
「さあ蓮さんもへーちゃんも早く行きましょー!ちゃんと二人の分も奢ってあげますからー!」
「早くしろよ!ヒヨコ頭と眼鏡!!」
晴彦と和馬はそう言うといち早く風紀委員室を出て行った。
「・・・・・・」
風紀委員室に取り残された二人は顔を見合わせて溜め息を一つ吐いた。
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