どこ

□なんということでしょう
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――さて、遡ること、数時間前。

万事屋の三人は、依頼で倉庫の片付けに来ていた。
そこそこ有名な富豪の倉庫ということで、かなり広い。そして物で溢れかえっている。
依頼主はこれは1日で片付けろと言っていたが、たった三人で片付けるとなると1日で足りるわけもない。
ただでさえ雑用の嫌いな銀時と神楽は、依頼の内容を聞いた時点で下がり気味だったテンションがすでに底を突き抜けていた。
……やる気など、皆無だ。

「ダリィなァおい」
「ほんとアル。私達に雑用させるなんて、いい度胸ネ」
「二人とも、手を動かしてくださいよ。大体、お金に目が眩んだのは銀さんじゃないですか」

ため息を吐きながら、新八が二人に声を掛ける。
しかし新八の声などまるで届いていないらしく、銀時と神楽はダラダラと近くにあった箱に腰掛ける。

「何か埃っぽいしよォ。新八ィ、窓開けてくんね?」
「うわっ、本が崩れ落ちたアル! 新八ィ、早くこっち片付けてヨー」
「オメーら、自分でやれよそのくらい! つーか働け!!」

ダラける二人に箒と雑巾を押し付けるようにして渡すと、新八は散らばっている本を拾い始めた。

「おーおー、新八ったら張り切っちゃってェ。こういう雑用でしか輝けねェもんなァ」
「哀れな眼鏡アル」

押し付けられた箒と雑巾を放り出し、銀時と神楽は本気でダラダラし始めた。
銀時は持参していたジャンプを読み出し、神楽に至っては酢昆布のゴミを散らかしている。
さすがに我慢の限界である新八は、手に持っていた本を思い切り投げ付けた。その本は依頼主の私物だということにまで考えは至らなかった。

「あっぶねェ! 当たったら大惨事だぞ!」
「むしろこの状況が大惨事だろォォ! 何で働いてんのが僕だけなんですか!」
「これは俺から新八への試練だよ、試練。いかなる理不尽な状況にも堪えられるようにだな……」
「こんな試練いらねェェェ!!」

銀時と新八がギャーギャーと言い合っている横で、神楽は新八が投げ付けた本に興味を示していた。
メルヘンチックなピンクの表紙に、丸文字で書かれたタイトル……いせかいへのとびら。タイトルの意味はよく分からないが、その可愛らしい表紙から絵本だと思った神楽は、その本を手に取り、開いてみた。

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