あなたが好きなだけなのです

□小さな心配
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「わかってくれましたか!」
「うん、わかったけど断りなよ。
じゃなきゃ咬み殺す」

それを聞いたしおりはわなわなと震えだした。



「…き、」
「?」
「恭弥さんのバカぁぁぁあ!!」

しおりは目にもとまらぬ速さで駆けていった。

残された雲雀は飛んできたヒバードにため息まじりに言った。


「変なの、あんなうるさい女、咬み殺せばいいのに」

何でだろう?と小さく首をかしげたが
ヒバードは歌ってばかりでこたえてくれなかった。



***



「骸くんに相談しようと思ったのに、
よく考えたらお家知らなかった…」

校外で骸を探したが見つからず、
泣く泣く自宅への道を進むしおり。

「呼んだら、くるかな」


…あ、何か来そう。

そう思った時点でこの子はアホである。
成績は良いのだが。

しおりは深呼吸し、

「ーむっくろくぅぅうぅん!!!」

叫んだ。



ひょっこり



「どうかなさりましたか?」

しおりは目の前に現れた男に絶句した。

赤と蒼の瞳、片目と同じ色の髪、そして見事なパイナップル。


「ほ、ホントに出たぁあ!!」
「貴女が呼んだんでしょう」
「な、ナッポー星人なんて知らないです」
「僕のことですか」

骸はしおりの頭を軽く小突いた。


「だ、大体何処から出てきたんですか?!」
「……たまたま近くを通ったんですよ」
「あ、なーんだ!!そうだったんですか」


骸は小さく息を吐いた。


「そんな事より、何故この時間に校外に?」
「へ…?あ、あぁ!!!」

しおりは叫んだ。


「じ、授業すっぽかして来ちゃいました…!」
「やはりですか…」

どうしようと唸っていると
骸がくすりと(クフフと?)笑って手を差し出してきた。

「せっかくですから、今日くらい
僕とサボりませんか?」

しおりはその言葉に目を輝かせた。


「さ、サボりなんて久しぶりです!!
最近は滅多にやってなかったですから…」
「…と、言う事は前まではサボりもあったという
ことですか?」

その問いにしおりは小さく笑った。

「まぁ、そんなトコです。
もうさぼらないって決めたんですけど…
今日くらい、サボらせていただきます!!」

「クフフ…では、何処へ行きますか?」
「うーん…あ、歩きながら決めましょう?
こういう時何処へ行けばいいか忘れちゃって…」

しおりが申し訳なさそうに言った。
それでも骸は優しく笑って、

「ゆっくり回りましょうか。付き合いますよ」


その言葉を聞いて、まだ出会ったばかりなのに
「優しくてカッコいい」としおりは思った。

そして密かに、
そう思ってしまった事を雲雀に謝罪した。


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