青い稲妻

□10.事実と真実
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マルコが血を流していた。
あんな姿を、初めて見た。

私が知っているマルコは、強くて、本当に強くて
例え斬られても、撃たれても、青い炎に揺らめくだけで
まるで本当に不死鳥なのではないかと思うほどで。


でも、違った。
彼は、決して不死身などではない。


人の死にはたくさん触れてきたのに。
いつだって冷静に眺めていられたのに。

なのに今、こんなにも

マルコ、あなたの死が、怖い。


「忘れろ」


カクの声が響く。


忘れる?

なにを?

あの騒がしい毎日を?
初めて食べたプリンの味を?
ちょっといびつな青い鳥のことを?
いつも、呆れたように笑っていた、あの


「いや、です」


小さく、強く響いたなまえの呟きに、カクの眉がわずかに跳ねる。


「絶対に…いや」


マルコ、もしかしたらもう二度と会えないかもしれないけれど
死という運命が、あなたをこの世界から攫っていってしまっても

また繰り返す、気の遠くなるような年月の中で


私があなたを忘れることは、

私の心からあなたが消え去ることは

絶対に、ないですから。


鼻の奥が熱くなるような感覚をこらえるかのように、なまえは下を向いたまま、強く唇をかみ締めた。


確かにマルコの死は怖い。
忘れてしまえば、それも気にすることなどなくなるのだろう。


けれど

長い長い時の中で見たら、ほんのまばたき程度の時間かもしれない

でも、今までに感じたことのない輝きがあった。
この大地に降りて初めて、世界が色づいた。

それをくれた家族を、
そして、その家族の暖かさを教えてくれたマルコを、


「私は…これからもずっと、忘れない!」





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