青い稲妻

□10.事実と真実
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傷は癒えても、体力までは回復しない。
熱と、出血と、石をえぐり出した時の激痛で、マルコの息は荒く、足取りもふらついていた。
それでも、両の目は強い怒気と殺気を交えて、高速で移動するカクを捉える。

「オラァッ!!!」

背後から斬りかかるカクの刀をハイキックで叩き落とすと、続け様に回し蹴りを繰り出す。

「随分元気な死に損ないじゃな…ッ!」
「これでも不死身で通ってるんでねい!」

それを膝でガードすると、余った勢いに乗ってカクは大きく後ろへ跳んだ。
そのまま窓枠に寄り掛かるように足をかけて着地すると、肘でガラスを割り抜いた。

「テメェ!逃げるのかよい!」

マルコの怒りの声に、カクが軽く鼻を鳴らす。

「おぬしに付き合う理由はないわい。わしは任務を遂行するのが仕事なんでな」
「随分個人的な任務もあったもんだねい」
「…口を慎めよ、海賊が」

ぎろり、と二人の視線が一瞬交わる。

そして、カクがゆっくりと口を開いた。

「偽りの不死で守れるものなら、守ってみるんじゃな」
「……」

マルコは黙ったまま、ただカクを見据えていた。

そして、音もなく

カクはその姿を消した。

「…大きなお世話だよい」

そう呟いて、マルコは大きく息を吐いた。


「マルコ!!!」
「なまえ…ッ、と!」

その声に振り向くと同時に、胸の中に飛び込んできた小さな体に思わずよろける。

「こんなに血を流して!熱だってあるのに!!あなたは…!」
「遅くなって、すまなかったよい」
「そう…では、なくてッ…」

「…余計な世話だったかい」

泣きそうなほどに顔を歪めて見上げるなまえに、困ったように優しく笑うマルコ。
その胸の中に頭を埋めると、なまえは小さくふるふると頭を振った。

「あんな顔されて、助けに行かねぇなんて、できねぇよい」

なにがさよならだ、できもしねぇこと口にしやがってよい。

「本当にお前ェは…不器用なやつだよい」


…俺も、か。


「本当に…生きてて、よかっ、た…」

「心配、させたかよい」
「当たり前です!!」

その切羽詰まったなまえの表情に、胸が詰まる。
しかし同時に、複雑な思いがマルコの中に渦巻いた。

いつか必ず、俺はまたこいつにこの顔をさせる。
この辛さを味わわせる。

俺が人である限り、それは避けられない。


『偽りの不死で守れるものなら、守ってみるんじゃな』


カクの言葉が、じわりとマルコの心を蝕んだ。




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