企画・頂き物

□靴擦れを我慢するマルコ(ノア様Ver)
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『くっ…!!』


突如に襲ってきた痛みにオレは顔を歪ませた。家を出て数十分。既に痛さで歩くのさえ億劫だ。
ったく何てこったい!初めてのデートに気合いを入れた結果が…これだい!
あ?何がって?んなもん、


靴擦れしちまったんだよい!!


しかし、彼女との約束の時間までもうそんなにない。今からこの服に合った靴を選んでる暇なんてねぇって訳だ。

さぁ、どうする?オレ。
絆創膏でも貼るか?
それともデートが終るまで耐えるか?
どうする!オレ!


『あっ!マルコさん!お待たせしました』

『お…おぅ』

『ふふ。今日もカッコイイですね』

『あ、ありがとよい』

『お洋服のセンスも凄く素敵です!』

『そ、そうかい?褒め過ぎだよい』

『そんな事ないですよ!特にその靴!とてもよく似合ってます!』

『そ、そうかい…ありがとよい』

やけに早く来たねぃ。これは耐えるしかねぇか。にしても、そんなにオレに会いたかったのかい?可愛いよい。それにベタ褒めじゃねぇかい。まぁ当然っちゃ当然だい。この日の為に有りとあらゆる雑誌を見て決めたコーディネートだ。
抜かりはねぇ。筈だったんだが…

『じゃぁ行きましょうか?』

『あぁ。何処に行くか決めたのかい?』

『んー、少し買い物付き合ってもらえますか?マルコさんに選んで欲しい物があって…』

『わかったよい。行くか』

『はいっ!』

チッ。買い物か…。せめて映画なんて言ってくれた日にゃ惚れ直したんだが…。
まぁ、彼女が知る由もねぇ事態だ。仕方ねぇか。

そうしてオレは、歩く度にズキズキと痛む足を隠し平静を装い過ごす事になった。

我慢はしたよい。それはもう耐え凌いだよい。しかし、もう我慢の限界だ。きっと、否、必ず血が出ているに違いない。
だが、靴擦れなんてダサイ失態を今更彼女に晒す訳にも…いかねぇ。

《えっ?この人まさか我慢してたの?今までずっと?あんな涼しい顔してたのに?ダッサーい!》

なんて思われて見ろい!
オレは…オレは立ち直れないよい

しかし無情にも彼女の買い物は続いた。
あれでもないこれでもないと呟き歩く歩く。

もうオレは歩きたくねぇんだい。どうかこの額の脂汗に気付いてくれよい!

はぁ…取り敢えず、座りてぇ。


『マルコさん?どうかしたんですか?顔色が…』

『ん?あぁ、なんでもないよい』

『…少し休みましょうか?喉も乾きましたよね?』

『あ、あぁ。そうだねい』

よし。いいよい。いいよい。ナイスだよい。流石オレの惚れた女だい。

漸く痛みから解放されたオレは、腰を下ろした瞬間天国かと思ったよい。いや、本気でな。
そんな天国を味わっていたオレは、これからが本当の悪夢の始まりだという事に気付いちゃいなかったのだ。


『マルコさん…これ飲んだら白ひげ丘に登りませんか?』

『丘っ!?』

『はいっ!今から登ったら丁度夕陽が見えると思うんですよね!』

『夕陽…』

『マルコさんと一緒に見たいんです。夕陽』

『………わかった。行くよい!オレは行くよい!』

『わぁ!そんなに気合い入れてもらえて嬉しいです!』

『お、おぅ』

『ほんの一時間程ですからね!歩いて』

『っっ…!!?一時間…』

『はいっ!楽しみですね!』

『……だねぃ』


その日、自宅に帰ったオレは悲鳴を上げた。
何でかって?そりゃぁおめぇ…

『踵が抉れてるよーぃぃぃ!!』


そしてオレは思い知らされた。我慢はよくねぇ。
あぁ、よくねぇよい。






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