帝都探偵倶楽部

□過去の解明
1ページ/2ページ




瑠生に諭され、副田涼がポツリポツリと話し出したのは‥‥彼女が連れて来られてから1時間ほど経った頃だった。





涼「俺の家は‥‥代々千歳の家に仕えてた。年齢も近かったし気も合った。それに俺達家族は新谷家に住み込んでたし、俺にとって千歳は姉妹みたいな存在だった。けど、10年前‥‥」

忠「火事、か」

涼「‥‥‥ああ。その日千歳が偶然いつもより遅く散歩に出たんだ。夜も遅かったけど行くって聞かなくて‥‥それで千歳が出てってでも心配になったんだ。暗かったから‥‥追いかけようとしたそしたら急に爆発音が聞こえて、気付いたら家が燃えてた」





涼はグッと唇をかみ締める。
よほど辛かった思い出なのだろう。





涼「俺の両親はその日は仕事でその家にいなかったから‥‥無事だったけど、千歳の家族は全員亡くなった。あと‥‥俺の姉と弟も。俺は偶然戸締りがして無かった窓の近くに居て‥‥姉と新谷の長男が逃がしてくれたから助かった」

瞬「なんやっけ‥‥新谷カズキ?」

涼「‥‥そこまで調べたのか?」

瞬「まぁ‥‥一応」

涼「‥‥‥カズ兄は、姉の恋人だった。きっと俺だけじゃなくて姉も逃がしたかったんだと思う。けど姉とカズ兄は2回で寝てた俺の弟を助に行って‥‥間に合わなかった。救助隊に助けられた俺は病院に運ばれて治療を受けて‥‥千歳に再会したのは1年後だった」





...........
9年前.....
.....



千「涼‥‥」

涼「千歳!!元気だったのか!?」

千「うん」

涼「良かった‥‥千歳だけでも無事で‥‥」

千「あたしだけじゃないよ。パールも居る」

涼「‥‥そっか。パールも無事だったんだよな」

千「涼のパパとママも元気?」

涼「あ‥‥ああ。うん。頑張ってる」

千「‥‥あたしもせいだよね」

涼「そんなことない!何で千歳のせいなんだよ!!」

千「あたしがわがまま言って散歩するって言わなきゃカズ兄たちは死ななかった!!」

涼「‥‥‥それは」




その時の俺は何も言えなかった。
それは確かに事実だったからだ。
千歳が散歩に行かなければ、俺と俺の姉と弟、そして千歳とカズ兄は俺の家に行っているはずだった

千歳が散歩に行くといったから、俺の家に行く時間を遅らせたのだ。





......
.......





麗「それは責任を感じて当然だな‥‥」

涼「ああ。‥‥火事が起こるまではアイツは明るかった!!いや‥‥そのあと千歳の大好きだったばあさんが死ぬまでは‥‥!!」

瑠「家族についでそのお祖母さんまで失って‥‥完全に心が折れたってとこか。今じゃかなり暗いほうだろ」

涼「そう、だと思う」

風「‥‥‥‥よほど家族が好きだったんだろうな」

瞬「‥‥へ?なに言うてん、風実」

風「‥‥いや」

瞬「?」





意味深に呟いた風実の言葉に瞬は小首を傾げる。

だが2人の様子などお構いなしに、忠征は次々と涼に質問を投げかける。





忠「お前、犬について知ってることあるか?」

涼「‥‥ラピスか?」

忠「ああ」

涼「名門中の名門家の血を引くお犬だよ。あの犬で都心に10軒高層マンションを建てられるって言ってた」

瑠「言ってたって‥‥‥誰が?」

涼「俺は又聞きだ。聞いたのは店長。放したのは‥‥‥ウチのお得意さん。千歳の叔父叔母の会社の重役らしい」

忠「‥‥‥‥‥名前は?」

涼「‥‥知らない」

忠「チッ」

瑠「舌打ちするな。彼女が悪いわけじゃない」

忠「分ってる。麗逸、特徴聞いて似顔絵描け」

麗「また?」

忠「そんなことしかできねぇんだからさっさとやれ!!」

麗「‥‥‥はい」




麗逸は渋々と腰をあげ、近くにあった裏白のチラシと鉛筆を持ち、涼の正面の椅子に座る。

麗逸の隠れた特技、それは人に聞いたものを鮮明に正確に描き出せるのだ。




瑠「‥‥‥でもこれで大分明けてきたね」

風「重役の男がラピスを誘拐したのは間違いないですね。そしてその理由もイラつくほど丸分りだ」

瞬「場所は誠ちゃんがわりだして、犯人は顔は麗たんで大丈夫やろ‥‥あとは」

忠「北河がどう動くかだ。犯人に脅されて罪に手を染めることもありえる。‥‥‥順序的には犬が最優先だな」

風「そうなるとやはり‥‥」




全員の視線が、いまだ睨めっこを終えない誠之助に移る。
決して誠之助の分析が遅いわけではないのだが、事態が事態だ。
急かしたくもなる。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ