妄想記
□都合のいい解釈
1ページ/1ページ
がつっ。
骨が悲鳴を上げる音。
驚いているのに私は悲鳴をあげられない。
ああ、痛いなあ。
やはりまた今日も繰り返される。
「…どうして?」
背中が痛い。
突然すぎてブレーキをかけられずぶっ飛んだあたしは店のガラスケースに突っ込んだ。
幸いガラスは無事だ。
ああ、良かった。
そんな呑気なことを考えていた。
店員や客は何もなかったかのように白々しく動く。
うん、それでいい。ことを荒立てないで。
「びっくりした!おどかさないで。」
笑顔を作り彼に駆け寄る。
彼はもちろん無言で先に店をでる。
うん、それがいい。
その私を蹴った脚は私を愛しているからこそ蹴った。
だから謝ったりなんかしなくていいんだよ。
言葉なんかいらないよ。
君がそうやって態度で示してくれるなら。
私は幸せ、なんだ。
end