うちのお嬢様は……

□仰せのままに(月)
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 「おはようございます。お嬢様」
 カーテンを開けながら声を掛けた。
 
 「ん……あら……おはよう」
 寝ぼけ眼で返事をするお嬢様。
 
 「紅茶をお持ちしましたよ」
 「いらない。まだ眠い」
 「駄目です。今日は忙しいんですよ。スケジュールがいっぱいで」
 「もう少しいいでしょ? 寒いもの」
 「駄目です」
 「夜神はいつも厳しすぎるわね。お前はアメとムチって言葉知ってる?」
 「もちろん」
 「じゃあ今はアメにして。一緒にぬくぬくしましょうか」
 「駄目です。そう言ってこの間は私のスーツを皺くちゃにしてしまいましたから」
 「お願い。もう少しだけ」
 
 可愛い笑顔でお願いされると、私も弱いんです。まだ見習いですから。

 「少しだけですよ」
 そう言って上着を脱いでベッドに腰かけた。
 「ぬくぬくするんでしょ?」
 彼女が掛け布団の端をめくりあげた。
 
 「服が皺になります」
 「脱いだらいいのに」
 「そんな暇はありません」
 「つまんない」
 そう言って彼女が抱きついてきました。
 
 「夜神はいつもいい匂いがするのね」
 「身だしなみには気をつけていますから」
 「汗もかかない感じ」
 「かくような事をすればかきますよ」
 「どんな?」
 「身体を動かすような事です」
 「ふーん」
 彼女が彼の背中に抱きついていた。
 小さな突起がシャツ越しに背中に当たるのが分かる。
 
 「夜神あったかいからこれでいいわ」
 「ぬくぬくしないんですか?」
 「だって服の皺のことばかり気にするから」
 そう言いながら彼女は彼の太もものあたりに手を伸ばしてそっと撫でた。背中が総毛立つような感じがする。
 「今はいいわ。そのかわり、夜は眠るまで一緒にいてね」

 天然です。
 何かしようとしてやっているわけではないんです。大人の女性がこんな風な仕草をしたら、男性はどう思います?
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