うちのお嬢様は……
□仰せのままに(月)
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午前の授業を終えて、昼食の時間になりましたが、なんだか食欲がないようです。どうしたのでしょうか?
「気分でも悪いのですか?」
お昼に親子丼をお出ししましたが、お箸があまりすすんでいません。
「ん、なんだかあまり食欲がないの。体を動かしてないせいかしら? 午後の授業で水泳とか乗馬とかすれば食欲でるかも。ねぇ、後で食べてもいい? このままだともったいないでしょ?」
「分かりました。では午後は体を動かしましょう」
おやつは親子丼になってしまいましたが、食べ物を残すのはいいことではありませんからね。
おやつの後、夕食と明日の朝食のメニューをチェックする為厨房へ行きました。
メニューは一ケ月前に大体決めてあるのですが、たまにお客様がいらっしゃったり、お嬢様が体調が悪い時など急に変更になったりすることがあります。
「模木!」
「はい、何でしょう」
「今日の夕食は中華だったかな?」
「そうです。エビの良いのが入りましたからそれをメインにしようかと」
「そうか。お嬢様の好物だな。それはいいんだが、今日はあまり食欲がないようだから全体的に軽めにしてくれないかな?」
「分かりました」
シェフの模木は見かけは体育会系でいかつい感じの大男だが、見かけによらずとても器用で実に繊細な料理を作る。メインだけでなくデザートまで完璧にこなせる素晴らしい腕前を持ち、夜神から信頼を寄せられている数少ない使用人の一人だ。
「模木さん!」
見習いシェフの宇生田が声をかけてきた。
「なんだ、どうした?」
「あっ、お話し中すみません……」
「大丈夫だよ。話は済んだから」
夜神はにこやかに微笑んでその場を立ち去ろうとしたが、宇生田が発した言葉を聞いてピタリと動きが止まった。
「卵の数が足りないようなんですけど」