うちのお嬢様は……
□仰せのままに(月)
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ベッドの中で、美奈子は俯いてしょんぼりしていた。
そばの椅子に腰かけた夜神はむっつりとした顔で黙り込んでいた。
「……ごめんなさい。反省してます」
「何度目ですか?」
「……覚えてない」
「でしょうね。数が多すぎですから。大体お嬢様は何でもかんでも興味を持ちすぎなんです。小さい頃からずっとですよ。それでお怪我をしそうになったこともありますし、周りの者に迷惑をかけたことも一度や二度どころではありません。覚えていらっしゃいますか? 一人で電車に乗って高尾山へ行かれた事がありましたよね。あの時は―――
「月」
「はい」
「ごめんなさい」
可愛らしくにっこり微笑まれると何も言えません。そして名前を呼ばれると。
「月」
「はい」
「私の名前は?」
「美奈子様です」
「そうね。じゃあ美奈子寝るから早く本読んで」
「分かりました」
お小言を言ってもいつも誤魔化されてしまいます。僕が駄目なんですけど。
今日はやはり僕の目を盗んで「卵かけご飯」を丼1杯分食べたそうです。卵三個で。
そりゃお昼食べられない訳だ。
厨房には三人いたはずなんですが、どうやって入り込んだんでしょうか。謎です。聞いても教えてくれなかったので想像するしかないのですが、まあとにかく、今後は気をつけましょう。
毎晩お嬢様が眠る時に本を読んで差し上げるのが、一日のうちで一番最後の仕事になります。聞いているうちに寝てしまわれることがほとんどなので、そうなったらそっと明りを消して静かに部屋を出ます。
名残惜しいんですが。
さて、これで大体僕の仕事が分かりましたか? 大体です、大体。
もっと他にも見えないところで色々してますよ。
それはまた別の機会にお話しします。
では、お休みなさいませ。
Fin