夢(ガンダム)
□君のいる世界。
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20階建てのマンションの屋上。
そのフェンスの上に座る一人の少女。
そこに駆け付けたのは一人の少年。
「アリア!」
どうやらアリアと言う名らしいその少女は、空からその少年へと視線を動かすと微笑んだ。
「来たんだ、カトル?」
カトルと呼ばれた少年は少女の近くまで歩み寄る。
「危ないから、下りて!」
「ねぇ、カトル?この世界は好き?」
少年の提案など最初から無かったかのような少女の対応に、少年は若干顔をしかめたが、それよりも少女の発言の方が気になったようだ。
「どういう、意味?」
「カトルは、戦ってる。コロニーを守るために戦ってるよね。じゃあさ、戦わなければならないこの世界を、カトルは好き?」
「僕は………分からない。」
「そっか。」
まるで、それでいいんだよ、とでも言いたそうに少女は優しく笑った。
「私は、好きだよ。」
「え?」
「この世界、好きだよ。」
「どうして?」
「だって、カトルに会えたから。
こんな戦争ばかりで、おろかな人間が蔓延るこの世界だからこそ、貴方に出会えた。私と貴方は、戦場で出会ったけれど、きっと……戦場でなければ、この広い世界ですれ違っていたから。」
「アリア……。それなら、より一層早くそこから下りて、こっちに来て?」
少年の悲しそうな表情に少女はキョトンとする。
「僕だって、アリアに出会えて良かったと思ってる。アリアは僕の生きる意味だ。
……お願いだから、今すぐ僕の元へ来て。」
「…なら、受け止めてよ?」
ガシャン
とフェンスが大きな音を立てて揺れる。
少女が下にいた少年に向かって飛び降りたのだ。
ドサッ
「いたた…」
「カトル、大丈夫?」
「なんとか、ね。それよりアリア、怪我はない?」
「カトルが下にいたから大丈夫。」
「それなら良かった。部屋に戻ろうか。体が冷えちゃうよ。」
「うん。」
少女と少年は手を繋いで歩き出した。
君がいる世界。
(それが全て)
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