果てしない幻想
□瞳
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「ねぇ、高杉はどうして左目を髪で隠しているんだよ?」
たずねて、しまったとおれは思った。
ずっと、気になっていたこと。
いつも髪で目を隠していた。
おまけにプールには、毎年入らない。
それが気になっていた。
でも訊いて後悔した。
高杉が悲しそうな寂しそうな目をしたから。
「銀時・・・」
ヅラが物凄い目でおれをにらんでいた。
そうだよな、ヅラには分かるんだよな・・・
ヅラはずっと高杉といたから。きっと、そこらへんの事情は飲み込んでいるんだろう。
「高杉・・・ごめ「良いよな」・・・へ?」
急に高杉が声を出した。
寂しい音色を立てて・・・
「銀時やヅラには親や親のような存在がいるんだ・・・。・・・てめぇらにはわからねぇよ。おれが何を思って、何を見ているなんて」
「たかす」
高杉は教室を出た。
もうすぐ、3時間目のチャイムが鳴ろうとしている。
結局高杉は教室に戻って来なかった。
荷物も全て置きっぱで学校から出たのだ。
おれがあんなこと訊いたから・・・
ヅラも左目を隠す理由は知らないという。
前、ヅラもおれと同じことを訊いて機嫌をそこねたみたいだった。
帰りの支度をしていると、担任の先生がおれのとこにきた。
「・・・坂田さんに頼みたいことがあります」
「おれに・・・?」
先生が頷く。
「高杉さんのところに行って、これを渡してきてくれませんか?」