中編

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――とても怖い、夢を見た。


おかげでパジャマは汗でびっちょり背中にくっついているし目は冴えてしまったしでとても最悪な気分だ。

怖い夢を見た後はどうしてこうも毎回すぐに眠れなくなるのか…。
本当に迷惑極まりない。

この持て余した時間をどうしてくれようか。
まだ恐怖が完全に消え去らない頭で考えていると、不意に友達が話していた夢喰い白黒バクのことを思い出した。


それは昼休みのこと。
いつものように昼食をとっていたときの話だ。

「――ねぇ、"夢喰い白黒バク"って知ってる?」

『なにそれ?』

「え、知らないの?!」

友達は驚いた、というように大きく目を見開いた。
そして身を乗り出して"夢喰い白黒バク"の話を始めた。

「夢喰い白黒バクはね…
悪い夢を見たときにその夢を食べてくれるっていういい動物なんだよ!
誰も見たことないけどね…。」

『ふぅん…。』

「もぉー、信じてないっ!
他にもいろいろと伝説があるんだから!!」


その時は信じていなかったけれど。
こうも眠れないと本当に"夢喰い白黒バク"がいれば良いのに、とすら思ってしまう。

「…さん」

『……へ?』

今、何か聞こえたような…。
怖くなって、布団を頭の上まで被る。

「え、何や?
無視かいな…。」

確かに何か聞こえる。
恐る恐る、布団から首を出した。

すると次の瞬間あたしの目に写ったのは、…
とても美しい男の子だった。

男の子のピンクのかかった髪は月明かりに照らされてキラキラ光っている。
その光景に思わず息を飲んだ。

『あ、の…?』

「あぁ、やっとこっち向いてくれはったわ。
俺は"夢喰い白黒バク"や。
よろしゅう。
お嬢さん、怖い夢見てたんとちゃう?
俺がそんなのやっつけてやるさかい安心しぃ?」

『…夢喰い、白黒バク…?』

「せやせや。
てゆぅてもそれは役職名みたいなもんやな。
俺の名前は廉造や。」

『廉造…』

あたしは今目の前で起きていることが理解出来ずに、ただ廉造の言葉をおうむ返ししていた。
さすがに苦笑いされる。

「そんな緊張せんでもええんやで?
俺は悪い夢をやっつけにきた正義のヒーローみたいなもんやから。
俺にすべて任せればうまくいきますぇ?」

『具体的に…
あたしは何をすればいいの…?』

とにかく早く恐怖から逃れたくて、あたしは答えを急かす。

「せやなぁ…
俺と契約してくれれば、いつでも飛んでいきますぇ。
どや?契約、します?」

『…うん、する』

「よっしゃ!
改めてよろしゅうな!!
じゃあ早速、甘美な夢へとご招待や。
ごゆるりと、お楽しみ下さい」

パチン、と廉造がウインクしたのと同時に眠気が襲ってきて。
あたしは深い深い眠りへと堕ちていった。

その日見たのは、とても幸せな夢だった…。


【続】
 

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