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Clap小説/廉造


『…っ、はぁっ…』

いつかの、夢を見た。
それはあたしが小さかった頃の夢。
物心ついたときから、あたしには悪魔が見えていた。
初めて見えたときにはもうこれ以上ないってくらいに怖くて。でもみんなに言って変な目で見られることのほうが怖くて。
結局誰にも言い出せず、ただひたすら居なくなることを祈って毎日を過ごしていた。

―あの頃は、まだ幸せだった―


事件が起こったのは、そのすぐ後だった。
町に大量の悪魔が押し寄せ、次々と人の命を奪っていく。
何も見えない人は訳も分からず死んでいく。
その光景を、あたしは家の中から見ていた。
両親は今日いない。
隣町で仕事があるからと、2人そろって出掛けて行った。
今あの2人がいなくてよかったと、心底思う。
外からは、人々の悲鳴が聞こえる。
ちらりと覗いてみると、たまたまこちらを見ていた悪魔と目が合ってしまった。


まずい、と思った時にはもう遅く。
悪魔があたしを殺そうと、大きく振りかぶっていた。

もうだめだ、と思った瞬間。
銃声と共に自分のものではない液体が、顔へとかかった。
恐る恐る目を開けてみる。

…信じられない光景が、目の前に広がっていた。

『…っ!?』

あたしに襲い掛かってきた悪魔からあたしを守って血まみれになったお父さんが、そこにはいた。
さっきの銃声は、お父さんが悪魔を打ったもの。
そして、あたしの顔にかかった液体は…お父さんの血だった。

『…ぇ、お父、さん……?
いや…っ…いやぁぁぁ!!!』

血液の半分以上を失ったお父さんはもう既に息が無くて。…それでも、死んだなんて認めたくなくて。
誰かに助けを求めに、家の外へと出た。

『誰か…っ、助けて……!』

そう言って見回すも、辺りは悪魔の屍ばかり。
人っ子一人居やしなかった。

「…っ!?
おい、あそこに人がいるぞ!!」

「本当だ!!
おーい、大丈夫か!?」

思わず泣き崩れそうになると、人の声が聞こえてきた。
何であの人達は生きているの…?
訳が分からなくなり、頭の中がぐるぐるする。
だんだんと気持ちが悪くなってきた。

「……今は避難しなければいけない。立てるか?」

『…はい。』

お父さんが、なんて言ってられない状況にあるのは分かっているし、言ったって何が変わる訳でもないけど。
何となく焦点が合わない目でお父さんを見る。

『ごめん…ね、』

あたしのせいで、命を落とさせて。

それだけ言うと、あたしは促されるままに避難をした。

そこで、衝撃の事実を知ることになる。



目を閉じればきみが浮かぶ。
(だから今日も、)
(眠れない。)


.


廉造「ありがとぉな」



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