青い空と真赤な君

□4th
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「で、下見に来たわけなんだ。」


「うん。…ってなんでアーサがついてきてるわけ?!」


「だって愛しい瑠花に変な虫がついたら困るし、何より瑠花とデートしたかったからね」


「ちょっと、どこ触ってんのよ」



休日の午後。
多くの家族や恋人達が犇めく街中に
ひときわ目立つ男女がいた。


男の方は派手な服を着こなした端整な顔立ちの青年で

女の方はお人形みたいな顔と可愛らしい服を着こなした少女である。


どっから見てもカップルにしか見えないのだが
当の少女は若干嫌な顔をしている。



「だって、瑠花が可愛いから」


「その理由は聞き飽きたのー。」


「う゛…」


「もー、私もう行くから帰ってていいからね!」




青年の返事を待たずに、少女はスタスタと街中に消えて行く。




青年はひとつため息を着くとそのまま身を翻してその場を後にした。


「全く、この僕をこんなに振り回すなんて、流石うちの期待の姫だ。」












「で、ここが雑貨屋ねー…うん、良いとこばっか。」



可愛い洋服に可愛い雑貨。
頂いた資金で欲しいものは何でも手にいれられる

シンデレラみたいな夢のような生活。


突然トリップした世界なんてあり得ないし、怖いって思ってたけど


個々では勉強も運動もなんでもかんでも出来る。
しかもずば抜けて



それにこの世界では身分も性別も関係なく私を好いてくれる。

いや、私だけを好いてくれるんだ。


最初こそ緊張したが、
今ではすっかりこの感覚が心地よくさえ感じられる。



好意をいつも、いつも持たれたら、それが当たり前だと感じてしまう。
それが人間だ。




「ねぇー君…」



こんな軽い声かけにも大分慣れた。
こういうのは無視するのが一番だ。



「君ったら」



流石にここまでしつこいとウザイ。
しかも何、
ナンパするにしてもこんなたるそう?つか眠そうな声で話しかけられるなんて
私、なめられてるの?!



「さっきから、何なのよ!!」


「はぁ?さっきから、邪魔なの。僕、そこのタオルケット取りたいのに…」


「あっ、ごめんなさい」



思わず謝ってしまった。
こんなのここにきてから初めてだ。

今までどんな状況でも
私は許されてきた。
それどころか好かれてるのが現状だ。



それなのに…
この男の子は寧ろ私に嫌悪感を抱いている。



「早く退いてよ…」


「あ、はい…」




薄いベージュ色の髪に空色の瞳。
不思議そうな男の子だなぁ…


この子は一体……?

















これが、私と、彼、名無しさんの出会いだった。

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